- 情報がありすぎて何から始めたらいいのか分からない……
- そもそも戸建てって本当に売れるの?
- 買ったときより高く売りたい!
不動産売却は、専門知識や専門用語が絡むため「難しい」「とっつきにくい」と感じる方も多いでしょう。
また、数千万円~数億円と非常に高額な取引となるので、不動産売却が初めての人でトラブルに巻き込まれる人も少なくありません。
私は、大手不動産メディアにてこれまで100本以上の不動産記事作成や修正を繰り返してきました。
最初こそ専門用語に付いていけずに挫折しかけましたが、今では不動産売却の流れについて知識を付けたと自負しています。
そこでこの記事では、戸建て売却が初めての方でも迷わずに成約まで進められる7つのSTEPを分かりやすく解説します。
この記事を読めば、「戸建て売却の事前準備から引き渡し」までの手順がすべてわかります。
戸建て売却で失敗したくない人はぜひ参考にしてみてください!
- 戸建て売却の流れを知りたい:このままお読みください。
- 住み替えの流れを知りたい:コチラへ
戸建て売却が難しい・売れないと言われる理由
そもそも、戸建て売却を検討している人の多くが、売却に対して「難しい」「本当に売れるの?」と不安や疑問を抱えています。
戸建てがなぜ売れにくいのか、マンションとの違いなどを最初に理解しておきましょう。
なお、実際に戸建てを売却した人への独自アンケートを実施したところ、50人中30人が「本当に売れるか分からなくて不安」と回答していました。
参考:クラウドワークスでの独自アンケート結果(2024年5月25日~5月31日集計)より
マンションより需要が少ないから
戸建ては、マンションより買い手の需要が少ないです。
実際の成約件数を見ても、戸建てよりマンションの方が成約件数が多く、買い手の需要があることがわかります。
参考:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」
マンションの年間成約件数は35,000件前後ですが、戸建ては12,000件前後であり、その差は3倍近くもあります。
このように、買い手からの需要が戸建ては少ないため、一般的に「売れにくい」と言われているといえます。
築22年で建物の価値がなくなるから
戸建ては築22年で建物の価値がゼロになります。これは、建物の耐用年数が関係しています。
耐用年数は以下のように建物の構造によって異なります。
▼構造別の耐用年数
構造 | 耐用年数 |
---|---|
木造モルタル(住宅用) | 20年 |
木造(住宅用) | 22年 |
レンガ造(住宅用) | 38年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造(住宅用) | 47年 |
一般的に戸建ては木造なので耐用年数は22年です。一方でマンションは鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造が一般的のため、築47年が耐用年数です。
戸建てとマンションでは耐用年数に2倍以上の差があり、価値の残存期間が大きく違うことがわかります。
このように、戸建ては建物としての価値がマンションよりも短期間で無くなってしまうのも、売れにくいと言われる理由です。
建物や設備が老朽化しやすいから
戸建ては、マンションと比べて建物や設備が老朽化しやすいデメリットがあります。
マンションと違って、戸建ては建物の管理を自分で行う必要があり、以下の対応が必要となる可能性があります。
- 外壁の損傷・劣化による修繕
- 部屋の壁や床の修繕
- 設備の老朽化による交換や修繕
基本的には専門業者へ依頼して対応するのでそこまで手間はかかりませんが、修繕費や交換費などはすべて自費となります。
また、戸建ては木造で建てられているため、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造のマンションと比べてどうしても劣化しやすく、修繕や交換の頻度も多くなるでしょう。
このように、戸建てはマンションよりも老朽化しやすく管理の手間もかかるため、築年数の経過した家は売れにくいといえます。
ウッドショックにより価格高騰しているから
2021年に起こったウッドショックも、戸建てが売れないと言われている理由のひとつです。
ウッドショックが起きたことで、戸建てに必要な木材が世界中で必要となり、日本もその影響を大きく受けています。特に日本は戸建て住宅が多いにもかかわらず、木材自給率は4割程度しかありません。
令和3年(2021年)の木材自給率は41.1%となりました。前年と比較すると0.7ポイント低下しました。
引用:林野庁
つまり、残りの6割を輸入に頼っているため、ウッドショックの影響を直撃しているといえるでしょう。
戸建ては本当に売却できないのか
ここまで戸建てが売却しにくい理由を解説しましたが、必ずしも売れないとは言えません。
ここでは、その理由を2点解説します。
【戸建てが売れる理由】
毎年12,000件前後は成約している
「戸建ては売れにくい」とお伝えしましたが、実際は毎年12,000件前後成約しています。
前述のとおり、成約件数に関してはマンションと比べて3分の1程度しか成約していません。それでも12,000件前後成約できている事実があるため、十分に売れる可能性はあるといえます。
また、成約物件の平均築年数も年々上昇しているため、築年数の経過した戸建てでも売れる可能性が高くなってきています。
▼実際の成約築年数
年 | 平均成約築年数 |
---|---|
2013年 | 20.16年 |
2014年 | 20.48年 |
2015年 | 20.60年 |
2016年 | 20.81年 |
2017年 | 20.99年 |
2018年 | 21.11年 |
2019年 | 21.38年 |
2020年 | 21.62年 |
2021年 | 21.20年 |
2022年 | 21.31年 |
2023年 | 21.82年 |
参考:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2023年)」
このように、売れにくいと言われている戸建てでも、実際は12,000件以上も売れていたり成約築年数が上昇していたりするため、十分に売れる可能性はあるといえます。
低金利時代だから不動産自体は売れやすい
日本は近年、超低金利時代と呼ばれ、住宅ローン金利が1%未満で借りられるほど低金利の時代です。また、住宅購入資金満額を借りる「フルローン」を利用する人も多く、自己資金の少ない一般の人でも簡単に家を購入できる時代となりました。
この低金利時代が続く限り、住宅の需要も維持できるので売却しやすいといえます。
しかし、2024年3月19日に日銀がマイナス金利政策の解除と金利上昇を決定しました。
日銀は、19日まで開いた金融政策決定会合で、「マイナス金利政策」を解除し、金利を引き上げることを決めました。
日銀による利上げはおよそ17年ぶりで、世界的にも異例な対応が続いてきた日本の金融政策は正常化に向けて大きく転換することになります。
引用:NHK
住宅ローン金利が上昇すれば自己資金の少ない人は住宅ローンを組めなくなると想定できます。その結果、住宅の需要が低下していき、次第に年間成約件数も低下する可能性があるでしょう。
このような理由から、低金利時代であれば売れる可能性は十分にありますが、将来的に続くかどうかは不透明といえます。
次からは実際に戸建てを売却する流れを詳しく解説します。
STEP①:事前準備をする
戸建てを売却する際、まずは事前準備から始めましょう。準備する内容は以下の7点です。
住宅ローン残債を確認する
まずは住宅ローン残債を確認しましょう。住宅ローンが残っていると抵当権を抹消できず、売却できないからです。
ローンが残っている方は以下の方法で完済しましょう。
- 手持ち資金をローン返済に充てる
- 売却資金をローン返済に充てる
ただし、手持ち資金に余裕がないから住宅ローンを組んでいる人が多いため、売却資金をローン返済に充てるのが一般的です。
売却資金でローン完済するためにも、事前にローンがどれくらい残っているのか確認しておきましょう。例えば、ローン残債が1,000万円であれば1,000万円以上の価格で成約できればローン完済できることが把握できます。
住宅ローンの返済方法のコツについては「住宅ローンが払えない人の特徴9選!」で詳しく解説しています。
また、住宅ローンがあるけど売りたい人はコチラを参考にしてみてください!
建物と土地の所有者を確認する
建物と土地の所有者(名義人)を確認しておきましょう。不動産は基本的に名義人でなければ売却できません。
名義人は「登記簿謄本(登記事項証明書)」に記載されているため、手持ちの証明書で確認しましょう。
ただし、記載されている名義人が現在の所有者とは限らないため、名義人が異なっていれば所有権移転登記をする必要があります。
境界線が明確になっているか確認する
隣地との境界線が明確になっているかどうか確認しておきましょう。境界線が曖昧のままだと、売却後に隣地所有者とトラブルになる可能性があります。
境界線は、境界標や杭などで示してあるのが一般的で、隣地との境界を明確にする大切な指標です。もし、実際に境界を示すものがなければ、登記簿謄本や地積測量図などでも確認できます。
それでも確認できなければ、そもそも境界線が確定していない可能性があるため、確定測量を行って境界線を明確にしておくのがよいでしょう。
いつまでに売却したいのかスケジュールを立てる
いつまでに売却したいのか事前に計画しておきましょう。
不動産売却は一般的に3ヶ月程度かかることが多く、長いと6ヶ月以上かかるケースもあります。
漠然と売り出してしまえば「いつか売れるだろう」と思い、売却の長期化につながる可能性もあります。そのため、売り出す際は以下のような目安を持っておくとよいでしょう。
- 3ヶ月売れなかったら不動産会社を変える
- 3ヶ月売れなかったら媒介契約を変える
- 1ヶ月買い手が現れなかったら価格を下げる
なお、不動産は1年のなかでも2~3月が繁忙期であるため、2~3月に成約できるようにスケジュールを立てるのがおすすめです。
売却にかかる費用を確認する
売却にかかる費用も確認しておきましょう。戸建て売却には主に以下の費用がかかります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消費用
- 住宅ローン一括返済手数料
- 譲渡所得税
売却にかかる諸費用の合計は、おおよそ売却価格の5%前後といわれています。
▼売却価格が3,000万円のケース
このケースだと費用だけで150万円もかかり、決して安い金額ではありません。
売却時の費用は「【費用一覧】不動産売却にかかる費用10選を一挙紹介!」で詳しく解説しているので参考にしてみてください!
売却時に必要な書類を準備する
売却時には主に以下の書類が必要です。
- 本人確認書類
- 印鑑証明書
- 登記済証・登記識別情報
- 住民票
- 確定測量図
- 固定資産税通知書
このほかにも状況によって必要な書類が増えるため、事前にしっかりと確認しておくのが大切です。
もし、手元になければ役所に行く必要があるため、慌てて用意することにならないように余裕を持って準備を進めましょう。
必要書類は「【完全網羅】戸建て売却時に必要な書類20選!」で詳しく解説しているので参考にしてみてください!
売却相場を調べる
不動産会社へ依頼する前に自分でも売却相場を調べておきましょう。売却相場を調べておくことで以下のメリットを得られます。
【売却相場を調べるメリット】
- 不動産会社の査定額が適正かどうか判断できる
- 相場より安い価格で売り出すのを防げる
- 売却価格が想定できる
実際に物件を売り出す際は不動産会社の査定を受けますが、不動産会社の査定が必ずしも正確とは限りません。
自分で売却相場を調べておけば、ある程度の正確性の判断ができるようになるため、悪徳業者を判別できたり適正価格で売り出せたりできるようになります。
自分で相場を調べることのメリットは多いため、不動産会社任せにせず自分でも調べた方がよいでしょう。
売却相場の調べ方は「【初心者向け】不動産価格を自分で調べる方法4選!」で詳しく解説しているので参考にしてみてください!
STEP②:不動産会社へ査定依頼する
事前準備が済んだら、不動産会社へ査定依頼しましょう。
査定をおこなうことで自分が住んでいる家の価格や価値を可視化できるため、おおよその売却相場を把握できます。
査定依頼する際は、以下の4点を意識しましょう。
訪問査定と机上査定から選ぶ
不動産会社がおこなう査定には「訪問査定」と「机上査定」の2種類があります。
それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。
▼査定の種類
訪問査定 | 机上査定 | |
---|---|---|
査定方法 | 物件条件+現地調査 | 物件条件のみ |
査定額算出期間 | 7~10日程度 | 1~3日程度 |
査定の精度 | 高い | 低い |
訪問査定は、物件条件だけはわからない劣化状況や設備状況まで見られるため、より詳細な査定を受けられるのが特徴です。
【初心者向け】訪問査定とは?準備する4つの書類や注意点を徹底解説!で詳しく解説しているので参考にしてみてください
- 物件の所在地
- 築年数
- 間取り
- 構造
- 階数
これらの条件を伝えるだけで査定してくれるため、「手軽に査定したい」「まだ本格的に売却を検討していない」を思う方におすすめの査定方法です。
机上査定については「【初心者向け】机上査定とは?」で詳しく解説しているので参考にしてみてください!
このように、査定方法によって査定精度や算出期間が異なるため、自分の目的に合わせて選ぶのがよいでしょう。
複数の不動産会社へ査定依頼する
査定する際は1社だけでなく、複数の不動産会社へ査定依頼しましょう。
複数社へ依頼することで以下のようなメリットを得られます。
【複数社へ依頼するメリット】
- 査定額を比較できる
- 売却相場を把握できる
- 相場に見合った価格を設定できる
そもそも査定額は不動産会社が算出した「おおよその価格」であり、「査定額=売れる価格」ではありません。
不動産会社によって査定方法や精度なども異なるため、1社のみの査定額を鵜呑みにしてしまうと、その査定額が適切かどうかの判断ができなくなります。
そのため、複数の不動産会社へ査定依頼して査定額を比較することが非常に重要です。
査定額に影響するポイント
不動産会社によって査定方法や精度が異なるとお伝えしましたが、実際にどこを見られるのか気になる方もいるでしょう。
不動産会社の訪問査定時には、主に以下のポイントをチェックされます。
- エリア
- 築年数
- 間取り
- 構造
- 階数
- 方角
- 交通の利便性
- 生活の利便性
- 周辺の治安
まず重要なのが物件のエリアです。人気エリアや「住みたい街ランキング」にランクインしているエリアであれば、買い手からの需要があるのでプラスに評価されます。
また、将来性のあるエリアも将来的に価値が上昇する可能性があるため、同様に評価されるでしょう。
その他、建物の築年数や間取りなどの基本的な条件から、利便性の良し悪しや周辺の治安などを参考に査定額を算出します。
このように、訪問査定時は建物だけでなく、利便性や治安などの建物以外のポイントまでチェックされます。
不動産一括査定を利用するのが便利
これから不動産会社へ査定依頼しようとしている方は不動産一括査定がおすすめです。
一度の条件入力で簡単に査定依頼でき、不動産会社ごとに問い合わせる必要がないので手間なく依頼できます。
【こんな人におすすめ】
- 不動産会社選びで迷っている人
- 不動産会社へ問い合わせるのが不安な人
- 複数の不動産会社へ査定依頼したい人
一度に依頼できるだけでなく、適正な査定額や不動産会社の対応を比べられるのも一括査定の魅力でしょう。
「【初心者必見】不動産一括査定を実際にやってみた!」では、私の体験談をもとに紹介しているので参考にしてみてください!
STEP③:不動産会社と媒介契約を結ぶ
不動産会社に査定してもらい、査定額に納得したら不動産会社と媒介契約を結びましょう。
不動産の売却活動は、広告掲載や不動産ポータルサイトへの掲載、売買契約など、一般の人には難しい内容がたくさん絡みます。
媒介契約を結ぶことで、そんな難しい売却活動を不動産会社へ任せられるため、不動産知識の少ない一般の方でも安心して不動産を売却できるようになります。
なお、媒介契約には3種類あり、それぞれで特徴が異なるので自分に合った契約形態を結びましょう。
▼媒介契約の種類
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
他社との契約 | × | × | 〇 |
買主の自己発見 | 〇 | × | 〇 |
レインズへの登録義務 | 7営業日以内に登録 | 5営業日以内に登録 | 義務なし |
業務報告義務 | 14日に1回以上の報告義務 | 7日に1回以上の報告義務 | 義務なし |
契約期間 | 最大3ヶ月 | 最大3ヶ月 | 期間制限なし |
詳しくは「媒介契約とは?種類や注意点などを初心者でもわかりやすく解説!」をご覧ください。
専任媒介契約
専任媒介契約は、1社のみと契約できる媒介契約です。
1社へ売却活動を任せることになるため、「不動産会社へ任せたい」「売却活動する時間がない」という方におすすめです。
また、不動産会社限定の情報サイト「レインズ」へ売り出し物件が登録されるため、全国の不動産会社へ売り出していることをアピールできます。
さらに、売却活動の業務報告義務も14日に1回以上の頻度で義務付けられているため、常に売却活動を把握できるのも専任媒介契約のメリットです。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、専任媒介契約のさらに縛りが強くなった媒介契約です。
1社のみと契約する点は同じですが、レインズへの登録機関が短かったり、業務報告義務が7日に1回以上と高頻度だったりする点が特徴です。
しかし、買主の自己発見が禁止されているため、不動産会社への依存度が高く、不動産会社が買主を見つけられない限り契約期間中は一向に進展がないケースも考えられます。
専属専任媒介契約を結ぶ際は、「本当にこの不動産会社に任せて大丈夫なのか」とよく考えてから契約しましょう。
一般媒介契約
一般媒介契約は、媒介契約のなかで最も縛りの弱い媒介契約です。
同時に複数社と契約できるため、不動産会社のサービスや想定売却価格を比較したい方におすすめです。
また、契約期間の制限がなかったり買主の自己発見ができたりするため、より余裕を持って売却活動したい方にも向いています。
ただし、レインズへの登録義務と業務報告義務がないため、以下のようなデメリットもあります。
- 買主が見つかりにくい
- 売却活動の状況を把握しにくい
複数社と比較できる反面、自分でも売却活動しないと買い手が見つからないリスクがあることを理解しておきましょう。
STEP④:売却活動を開始する
不動産会社と媒介契約を結んだら売却活動を開始しましょう。
売却活動は主に以下の流れで進めていきます。
売り出し価格を設定する
売却活動を始めるにあたって、まずは売り出し価格を設定しましょう。売り出し価格は主に以下の方法で設定します。
【売り出し価格の設定方法】
- 査定額を比較して決める
- 周辺の売り出し物件を参考にする
- 担当者と相談して決める
売り出し価格に正解はないため、基本的には「売却相場に見合った価格」を設定するのが最適です。
よくある失敗例として、「高く売りたいから」といって売却相場より極端に高く設定してしまうケースがあります。
この場合、高額売却できる可能性がある反面、買い手が現れなくなり売却が長期化するリスクがあります。
売れにくくなれば売り出し価格を下げざるを得ない状況になるでしょう。
このように、売り出し価格は「売却相場に見合った価格」を設定するのが大切です。
適切な売り出し価格を設定するためにも、査定額を比較したり担当者と相談したりして設定しましょう。
不動産会社が売却活動をおこなう
売り出し価格を設定したら実際に物件を売り出します。
基本的に売却活動は不動産会社が進めてくれるため、売主は売却状況の確認や買い手が見つかった際の内覧に備えます。
なお、媒介契約によって買主の自己発見が可能かどうかが異なるため、専任媒介契約または一般媒介契約を結んでいる場合は自分でも買主を探してみましょう。
万が一買主が見つからなかったときのことを想定して、依頼先の変更や媒介契約の変更を考えておきましょう!
内覧に向けて掃除を始める
売却活動中、売主は内覧に備えて部屋の整理や掃除をしておきましょう。
内覧次第では購入希望者にプラスな印象を与えられるため、成約に向けて大きく前進できるチャンスといえます。
なお、内覧時は主に以下のポイントをチェックされます。
- 部屋の綺麗さ
- 設備状況
- 水回り状況
- 間取り
- 周辺の利便性
このなかでも特に重要なのが「水回り状況」です。
水回りは内覧者が特に気にするポイントであり、浴室やトイレなどが汚れていれば大きなマイナスポイントとなります。
内覧当日までに清掃して少しでも清潔感をアピールできるようにしておくことが大切です。
「掃除する時間がない」「面倒くさい」という方はハウスクリーニングを利用してみよう!
購入希望者への内覧対応をする
購入希望者が現れたら実際に内覧対応をしましょう。前述のとおり、内覧は実際に物件を見てもらうため、成約できるかどうかに大きく関わります。
内覧当日は以下の点を意識して対応しましょう。
【内覧当日のポイント】
- 部屋の臭いに気を付ける
- 部屋を整理して解放感を持ってもらう
- スリッパを用意する
- すべての部屋の電気を点灯させる
- 住むことのメリットをアピールする
内覧時は部屋中を見て周るため、スリッパを用意しておくと好印象を抱いてもらえるでしょう。また、家中の電気を点灯させることで明るい印象を持ってもらえます。細かいですが、少しでも成約確率をUPさせるためにも徹底しておきましょう。
また、実際に住まないとわからない「物件ならではのメリット」があればアピールしましょう。
このように、内覧は工夫次第で大きく内覧者へアピールできるため、少しでも好印象を持ってもらうためにも事前に準備しておくことが大切です。
STEP⑤:買主と売買契約を結ぶ
内覧によって物件を気に入ってもらったら買主と売買契約を結びます。売買契約をスムーズに進めるために以下の点を理解しておきましょう。
不動産会社が売買契約書を作成する
売買契約は売主と買主の間で売買契約書を通じて契約されます。売買金額や代金の支払い方法、支払い時期などが記載されています。
売買契約も不動産会社が基本的に進めてくれますが、売主は以下の2点について把握しておきましょう。
- 売買契約書のコピーを貰って確認しておく
- 印紙税を支払う
売買契約書のコピーを貰って確認しておく
重要事項説明書と売買契約書のコピーを貰って、事前に確認しておきましょう。これらの書類は不動産の専門用語が多数記載されているため、しっかり理解しないでサインしてしまうと契約後にトラブルへ発展する可能性があります。
不動産会社へ問い合わせれば契約までにコピーを貰えるため、内容に不備があっても事前に気付けるかもしれません。また、分からない点などは担当者へ聞けるため、契約内容を理解して契約を結べるでしょう。
印紙税がかかる
売買契約書を作成する際は印紙税が発生します。
印紙税額は売買契約書に記載の金額によって以下のように異なります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
支払う際は、記載金額に合わせた額の収入印紙を売買契約書に貼り付けて課税します。
収入印紙は基本的に不動産会社が用意してくれるため、契約当日までに代金を用意しておくとよいでしょう。
不動産会社が売買契約を進める
作成した売買契約書をもとに売買契約を進めていきます。
売買契約時は、重要事項説明書と売買契約書の説明・交付がされるため、それぞれの説明を聞いて不備や疑問点がないか確認しておきましょう。
売買契約は2時間前後かかるケースが多いため、一日空いている日など余裕のあるタイミングに契約するのがおすすめ!
売買契約書に署名・押印する
売買契約書の説明が完了したら、いよいよ署名と捺印をします。
契約内容を再確認して本当に不備がないか、疑問点はクリアになっているかなどをチェックしておきましょう。
買主へ手付金を支払う
売買契約が完了したら、買主から手付金を貰いましょう。
手付金は購入代金の一部のため、一度受け取ると契約まで進むのが一般的です。
しかし、「やっぱりほかの買主へ売りたい」などの理由で契約をキャンセルしたい場合もあるでしょう。そんな場合は手付金の倍額を買主へ返還すれば契約解除できます。
ただし、本来払う必要のない手付金を売主が払うため、余計な支出となります。どうしても契約解除したい場合がない限りは本来の買主と契約するのがよいでしょう。
手付金について詳しくはコチラ!
不動産会社へ仲介手数料を支払う
売買契約を結んだタイミングで不動産会社へ仲介手数料を支払います。
仲介手数料額は売買価格によって以下のように定められています。
売買価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5%+税 |
200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+税 |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円+税 |
仲介手数料だけで100万円を超えるため、非常に高額なのがわかりますね。
事前にどれくらいかかるのか理解したうえで用意しておきましょう。
仲介手数料の値切りについてはコチラ!
STEP⑥:家の引き渡し・決済
売買契約が完了したら決済をします。
主に購入にあたっての残代金の支払いと所有権移転登記をおこないます。なお、引き渡しまでの流れは以下のとおりです。
書類の準備や登記手続きなどがあるため、しっかりと把握しておきましょう。
必要なものを準備する
まずは決済に必要なものを準備しましょう。
- 本人確認書類
- 印鑑証明書(発効から3ヶ月以内)
- 実印
- 仲介手数料(契約時に支払った残り)
- 登記識別情報通知書または登記済権利証
- 固定資産税・都市計画税納付通知書
- 代金を受け取る預金通帳およびキャッシュカード
- 抵当権抹消登記申請書
- 物件の鍵
このように、決済時にはさまざまな種類の書類や物が必要です。特に書類は役所などに問い合わせないと入手できないものもあるため、余裕を持って準備するのをおすすめします。
よくある失敗例として、決済当日に実印を家に忘れてしまい家に取りに帰るケースがあります。
決済当日は買主や担当者、司法書士などが集まるため、その場で待たせることにもなります。気まずい思いをしないためにも、しっかりと前日までに準備しておきましょう。
買主から代金を受け取る
必要なものを準備できたら、買主から購入代金を受け取ります。基本的には売主指定の口座へ振り込む形となるため、必ず預金通帳とキャッシュカードを用意しておきましょう。
受け取る金額は、事前に受け取っている手付金額を差し引いた残りの代金を受け取ります。
住宅ローンの返済
買主から代金を受け取ったら住宅ローンの返済に充てましょう。
前述のとおり、住宅ローンを完済しないと家は売れません。決済当日は住宅ローンを組んだ金融機関へ集まるのが基本のため、その場で返済手続きをおこないます。
住宅ローン返済にお困りの方はコチラ!
司法書士による登記登録・抹消手続き
住宅ローンを完済できたら、抵当権抹消手続きを司法書士にしてもらいます。抵当権を抹消することで、晴れて家を売れる状態となります。
この際、金融機関から「抵当権抹消登記申請書」が事前に送られてくるはずなので、当日は忘れずに用意しておきましょう。
司法書士への依頼料についてはコチラ!
買主へ鍵を引き渡す
抵当権を抹消できたら、買主へ家の鍵を引き渡します。
抵当権抹消登記と同様に、買主への所有権移転登記も買主側でおこなわれるため、正式に家の所有者が買主へ移ります。
鍵の数や種類に不備がないか確認したら引き渡しは完了です。
不動産会社と司法書士へ残りの手数料を支払う
最後に、不動産会社へ仲介手数料の残金を、司法書士へ登記手続きの手数料を支払います。
不動産売買時の登記には「登録免許税」が課せられ、登録免許税額に応じて課税されます。
売買、相続などによる所有権の移転の登記、所有権の保存の登記、抵当権の設定の登記、根抵当権の設定の登記、配偶者居住権の設定の登記などの申請をする場合は、法律(登録免許税法等)で定められた登録免許税を納付する必要があります。
引用:法務局
なお、所有権移転登記費用は基本的には買主が負担しますが正式なルールはないため、売主と買主のどちらが負担するのか、事前に確認しておきましょう。
STEP⑦:売却益が出たら確定申告を行う
不動産売買は正式に完了しましたが、売却益が発生したら確定申告を行いましょう。
確定申告の流れについては国税庁の「申告の流れ、申告が必要な方」を参考にしてみましょう。
家の購入価格よりも売却価格が上回っていた場合は「譲渡所得」として扱われるため、上回っている分に対して譲渡所得税が課せられます。
なお、譲渡所得税は家の所有期間によって以下のように異なります。
条件 | 税率 | |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 所有期間が5年超 | 所得税15%+住民税5% |
短期譲渡所得 | 所有期間が5年以下 | 所得税30%+住民税9% |
※平成15年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の所得税の2.1%が課税されます。
参考:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」「短期譲渡所得の税額の計算」
▼例えば、10年所有した戸建てを売却して1,000万円の譲渡所得を得た際は以下の手順で計算します。(長期譲渡所得)
税金は非常に高額ですが申告しないと「無申告加算税」や「延滞税」が課せられ、さらに高額になる恐れがあるため、譲渡所得が発生したら必ず確定申告をしましょう。
「こんなに税金を払いたくない!」と思う方に向けて、次は税金を抑えられる控除特例をご紹介します。
売却益が出た際に利用できる特例
戸建てを売却して譲渡所得が発生した際は、以下の特例を利用することで大きな節税効果を得られます。
3,000万円特別控除
譲渡所得が発生した際、特に利用したいのが3,000万円特別控除です。譲渡所得のうち3,000万円までは控除できるため、非常に大きな節税効果を得られます。
例えば、譲渡所得が3,000万円以下であればすべて控除されるため、税金が一切発生しません。
ただし、適用するには以下の条件をすべて満たす必要があるため、事前に確認しておきましょう。
- 実際に住んでいる
- ほかの特例を受けていない
- 前年、前々年に3,000万円特別控除を受けていない
- 前年、前々年にマイホーム買い替え特例を受けていない
- 親子間や夫婦間での売買でない
- 災害などによってその家に住まなくなってから3年後の12月31日までに売却できている
参考:国税庁
つまり、実際に住んでいる家を家族や夫婦以外の人に売却して、ほかの特例を受けていなければ適用できる可能性が高いということです。
軽減税率の特例
軽減税率の特例は、長期譲渡所得よりもさらに低い税率の約14%まで抑えられる特例です。
具体的には、3,000万円特別控除を利用しても尚残った譲渡所得に対して税率がかかる特例であり、残りの譲渡所得に対して以下のように税率が異なります。
3,000万円特別控除適用後の譲渡所得残高 | 税率 |
---|---|
6,000万円超 | 約20% |
6,000万円以下 | 約14% |
▼例えば、10年所有した家を売って9,000万円の譲渡所得を得た際は以下の計算となります。
ちなみに、軽減税率の特例を利用せずに長期譲渡所得のみで計算すると以下のようになります。
6,000万円×20%=1,200万円
このように、軽減税率の特例を利用することで大きく節税できるため、高額な譲渡所得を得た際は必ず利用しましょう!
マイホームの買い替え特例
本来、家を売却して譲渡所得を得た際は譲渡所得税が課せられるため、確定申告にて税金を申告しなければなりません。それでも、買い替え特例を利用することで本来納税すべき譲渡所得税を、買い替え物件の売却時まで繰り延べできるようになります。
家を購入する際はさまざまな諸費用がかかるため、少しでも費用を抑えたい方は利用するのがよいでしょう。しかし、支払う税金を繰り延べできるだけで、免税できるわけではないので注意が必要です。
売却損の際に利用できる特例
家を売却して譲渡損失が発生した際は、「譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例」を利用できます。
この特例は、普段の所得(給与所得など)にかかる所得税や住民税を譲渡損失の分だけ差し引ける特例です。
▼年間給与所得500万円の人で、2,000万円で買った家を売った結果1,000万円の譲渡損失が発生したケース
本来であれば給与所得500万円に対して所得税や住民税が発生しますが、これらの税金を譲渡損失分の1,000万円を代わりに差し引けます。
また、譲渡損失額が大きく、給与所得からの差引額が余った場合は売却後3年間に渡って繰越せるため、最大で3年間は給与所得にかかる税金をゼロにできる可能性があります。
ただし、1,000万円分を一気に差し引けるわけではなく、本来払うべき税金分のみを差し引ける点には注意しましょう。
まとめ:戸建て売却の流れを理解してスムーズに売却活動を進めましょう!
戸建て売却の流れについて解説しました。
戸建てを売る際は、必要な書類や費用などがたくさんあるため、余裕をもって進めるのが大切です。
また、専門知識や専門用語が絡むので、不動産会社の担当者と相談したりコミュニケーションを取りながら進めるのがよいでしょう。
これから戸建てを売却しようとしている方は、ぜひこの記事を何度も読んで参考にしていただけると嬉しいです!