- 抵当権ってどんな意味?
- どうすれば抹消できるの?
- 抵当権は競売に関係してるって聞いたけどホント?
住宅ローンを組んで家を購入した際に設定される「抵当権」ですが、イマイチ意味を理解できずに不安を抱いている人も少なくありません。
そこでこの記事では、不動産知識の少ない人でも簡単に理解できるように、「抵当権とはなにか」について詳しく解説します。
この記事を読めば、抵当権の意味から抹消方法まですべてわかります。
住宅ローンを組んで家を購入しようとしている方、すでに抵当権を設定されている方はぜひ参考にしてみてください。
抵当権とは購入不動産を担保にされる権利
抵当権とは、住宅ローンを組む際に債権者である金融機関が債務者である買主に対して不動産を担保として設定する権利です。

「住宅ローンを組む」とは別の言い方だと「金融機関からお金を借りる」ことであり、お金を返せなくなった以上、代わりに不動産を売って資金を返すのは当然といえるでしょう。
これを専門用語を交えて説明すると、「抵当権とは購入不動産を担保に設定する権利」と言います。
抵当権が設定されるタイミング
抵当権が設定されるタイミングは、不動産を購入して決済するタイミングです。
決済までは以下の手順で進みます。
- 欲しい物件を見つける
- 住宅ローン仮審査
- 売主と売買契約
- 住宅ローン本審査
- 決済・各登記設定
決済が完了すると不動産所有者が売主から買主へ移転するための所有権移転登記が行われます。所有権移転登記が完了すれば正式に買主へ所有権が移るため、このタイミングで購入不動産へ抵当権が設定されるのです。
抵当権を実行されると競売にかけられる
住宅ローン返済が滞り、何か月も返済できなくなった場合は抵当権が実行され、強制的に競売にかけられます。
一度競売にかけられてしまうと基本的に取り返せないため、退去せざるを得ない状況となります。






▼競売までの流れ
滞納期間 | 状況 |
---|---|
1ヶ月 | 金融機関から催告される |
2~3ヶ月 | 「遅延損害金」「一括返済」を警告する書類が届く |
4~6ヶ月 | 「期限の利益の喪失通知」が届き、一括返済を請求される |
7~10ヶ月 | 「競売開始決定通知」が届く |
11ヶ月前後 | 競売に向けて、不動産の現況調査が入る |
12ヶ月前後 | 競売に向けて入札決定通知書が作成される |
それでも、リースバックであれば入札開始前までならギリギリ間に合う可能性があります。住宅ローンを滞納してしまい、競売にかけられそうな状況の方はリースバックを検討してみましょう。
抵当権を抹消するには住宅ローン完済が必要
抵当権を抹消するには住宅ローンを完済しなければなりません。抵当権が設定されていると、いつまでもローン返済に追われるのですぐに抹消したいと思う方がほとんどでしょう。
しかし、金融機関からお金を借りている以上、すべて返済しなければ抵当権は抹消できません。また、住宅ローンを完済しても自動的に抹消されるわけではなく、抹消登記をおこなう必要があります。
抹消の方法については次の章で解説します。
抵当権を抹消する手順
抵当権を抹消する手順を解説します。
抹消方法は、司法書士へ依頼するケースと自分で抹消するケースがあるため、それぞれ確認しましょう。
司法書士へ依頼するケース
司法書士へ依頼する際は以下の手順で進めます。
まずは以下の書類を準備しましょう。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報
- 登記識別情報または登記済証
- 抵当権者(金融機関)からの委任状
▼登記申請書
画像引用:法務局
抵当権抹消手続きの際に必要な書類です。法務局へ直接受け取りに行くか、法務局公式サイトから入手可能。
▼登記原因証明情報
引用:南司法書士事務所
登記の目的や抹消すべき登記の記録をした書類であり、法務局で保管されている。関係者であれば見られる。
▼登記識別情報
引用:法務局
抵当権を設定した際に金融機関から渡される書類です。法務局の窓口や郵送でも受け取れます。
▼抵当権者からの委任状
引用:くわはら司法書士事務所
住宅ローン借入先の金融機関から送られてきます。
抵当権の抹消は抵当権者(金融機関)と抵当権設定者(所有者)が共同して手続きするのが原則です。それでも、抵当権者からの委任状があれば所有者が単独で抹消できるようになります。
STEP②:司法書士へ相談する
必要書類を準備したら司法書士へ相談します。
基本的に手続きはすべておこなってくれるため、必要な書類や費用を用意しておきましょう。
STEP③:司法書士へ抹消手続きをしてもらう
抹消手続きができる状況になったら実際に抹消してもらいます。
STEP④:抹消費用を支払う
抵当権の抹消が完了したら司法書士へ報酬を支払います。費用はおおよそ15,000円~2万円前後です。
自分で抹消するケース
抵当権を自分で抹消する際は以下の手順で進めましょう。
なお、自分で抹消するにあは、すでに住宅ローンが完済されていることが条件です。
まだローンが残っており、売却資金でローン返済して抹消する場合は司法書士へ依頼しなければなりません。
STEP①:必要書類を準備する
司法書士へ依頼する際と同様に、まずは必要書類を準備しましょう。
STEP②:法務局から登記申請書を入手する
法務局の公式ホームページに、登記申請書のひな形や記入時の注意点が記載されているので参考にしながら進めてみましょう。
STEP③:登記申請書を記入して法務局へ提出する
登記申請書に必要事項を記入して法務局へ提出します。
提出方法は「法務局の窓口へ提出する」「郵送で提出する」の2パターンがあり、窓口であればその場で記入不備を指摘してもらえるのでスムーズに進められます。



なお、郵送の場合は自宅最寄りの法務局ではなく、その不動産を管轄する法務局へ郵送しましょう。
STEP④:完了通知書を受け取る
手続きが完了したら完了通知書を受け取ります。
受け取れるまでの期間は法務局によって異なりますが、概ね1週間前後で受け取れるでしょう。
抵当権を設定する際にかかる費用
抵当権を設定する際は以下の費用がかかります。
費用名 | かかる費用 |
---|---|
登録免許税 | 土地・建物それぞれ1件1,000円 |
司法書士依頼料 | 2万円前後 |
登記事項証明書発行費 | 600円 |
法務局への交通費などの雑費 | 2,000円前後 |
登録免許税は、土地と建物のそれぞれに費用が発生します。不動産は基本的に土地とセットで売却するため、物件1件につき2,000円かかると想定しましょう。
抵当権抹消を司法書士へ依頼した場合は依頼料として2万円前後かかります。そのほかにも登記事項証明書を発行する際の費用や法務局への移動費や登記簿謄本の確認費などの雑費もかかります。
これらを合わせると、司法書士へ依頼した場合はおおよそ3万円前後かかると想定しておきましょう。






根抵当権との違い
根抵当権との違いを解説します。似たような言葉ですが、根抵当権に関係する人や設定などが大きく異なるので確認しておきましょう。
極度額の範囲内なら何度でも借入できる
根抵当権は、債権者が指定した極度額(債権者が指定した最大借入可能額)の範囲内であれば何度でも貸し借りできる権利です。
抵当権のケースで考えると、何度もお金を貸し借りするということは抵当権の設定と抹消を繰り返すことになります。しかし、抵当権の設定と抹消には手間がかかり、お互いに労力を使うことになるでしょう。
このようなケースで利用できるのが根抵当権です。根抵当権の場合、決められた額の範囲内であれば抵当権の設定や抹消をおこなわずにお金の貸し借りができるようになります。



基本的に法人が利用する権利
根抵当権は基本的に法人やビジネス目的の個人が利用する権利です。
前述のとおり、根抵当権は債権者と債務者の間で何度もお金の貸し借りをおこなうケースに利用できる権利です。
例えば、企業同士でビジネスをおこなう場合は高額なお金を何度も貸し借りすることが想定できます。この際、毎回抵当権を設定したり抹消したりしていては手間や時間がかかってしまいます。
それでも、根抵当権を設定すれば極度額の範囲内であれば何度でも貸し借りできるようになるため、効率的にお金の貸し借りができるようになるでしょう。
このような理由から、根抵当権は法人やビジネス目的の個人が利用する権利といえます。
抵当権に関するよくある質問
抵当権に関するよくある質問をご紹介します。
抵当権に関して抱きやすい疑問や不安などを確認しておきましょう。
Q:抵当権と担保の違いは?
そもそも担保とは、債務者が債務を果たさない場合に損害を補填するために設定されるものです。
▼担保の特徴
人的担保:連帯保証人などのように「人」が担保になる
物的担保:不動産などの「物」が担保になる
抵当権は不動産に対して設定されるため、物的担保のなかの権利といえるでしょう。
つまり、担保と抵当権は親子関係のようなものであり、それぞれで区別するわけではありません。



Q:抵当権と質権の違いは?
抵当権は購入不動産を担保にする目的で設定されますが、債務者がそのまま住むので所有者は債務者です。
一方で質権は債権の担保として債務者から物を受け取り、債務不履行があった際にその物を売って弁済を受けられる権利をいいます。






このように、抵当権と質権では担保物の所有者が異なる点が大きな違いです。
Q:抵当権が実行される滞納期間は?
住宅ローン返済の滞納期間が長引くと抵当権が実行されて競売にかけられますが、その期間はおおよそ12か月前後です。
ただし、いきなり競売になるわけではなく、金融機関からローン返済の催告や遅延損害金の警告などが通知され、それでも返済しない場合に競売にかけられます。
一度競売にかけられしまうとローン返済できる状況だとしても取り戻せなくなる可能性があるため、できる限り早めに返済しておきましょう。
まとめ:抵当権を抹消するためにも早めにローン返済しよう!
抵当権について解説しました。
抵当権とは、住宅ローンを組む際に金融機関が債務者である買主に対して不動産を担保として設定する権利です。
住宅ローン返済ができなくなると、金融機関は抵当権を実行して購入不動産を強制的に競売にかけ、売却資金で弁済します。



一度競売にかけられてしまうと後戻りできなくなる可能性が高いため、できるだけ早めに返済しましょう。
また、抵当権を抹消するには住宅ローンを完済する必要がありますが、抹消手続きには手間や費用がかかるため、司法書士へ依頼するのが一般的です。
これから不動産を購入しようとしている方や現在ローンを組んでいる方は、抵当権について理解しておくことでトラブルを回避できるでしょう。