- そもそも不動産の決済って何だろう……。
- 不動産決済ではどのようなトラブルがあるの?
- トラブルを防ぐための対策を知りたい!
不動産の決済を控えている方で、このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、不動産売買における決済の概要やトラブル事例を詳しく解説します。
トラブルなく決済を完了させるためにも、ぜひこの記事を参考に決済を進めてみてください!
不動産売買における決済とは
不動産売買における「決済」とは、取引の最終段階で買主が売主に物件の代金を全額支払い、売主が物件を買主に正式に引き渡す手続きのことです。
この際、所有権の移転や必要書類の受け渡しも同時におこなわれます。
決済は、売買契約で取り決めた内容を実行する重要なステップであり、買主と売主の双方が同時に義務を果たすことで取引の安全性を確保します。
初心者の方でも、この流れを理解することで不動産取引を安心して進められます。
不動産決済のトラブル①:必要書類の不備
不動産決済における一つ目のトラブルは、必要書類の不備によるものです。
決済時にはいくつかの書類が必要ですが、当日までに準備しておらずトラブルになるケースも少なくありません。
ここでは、決済時に必要な書類や対策を解説します。
必要な書類
決済時には以下の書類が必要です。
行の説明 | 行の説明 |
---|---|
権利証(登記済権利証)または登記識別情報通知書 | 不動産の所有権を証明する書類 |
印鑑証明書 | ・実印が正式なものであることを証明する書類 ・発行から3ヶ月以内のものが必要 |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポートなど |
固定資産税納付通知書 | 税金の精算に使用 |
実印 | 正式な契約や書類に押印するために必要 |
銀行口座情報 | 残代金の受け取りに必要 |
物件の鍵 | 買主への引き渡し時に必要 |
これらすべてが必要であり、一つでも欠けていると決済が遅れる場合があります。
前日までに用意できるよう、計画的に進めましょう。
対策:必要書類をリストアップしておく
事前に必要な書類をリストアップし、確実に準備しておきましょう。
チェックリストとして活用することで、当日の混乱やトラブルを未然に防げます。
不動産取引は多くの関係者が関わるため、スムーズな進行のためにも、必要書類の準備は徹底しておこないましょう。
不動産決済のトラブル②:資金の振込遅延
資金の振込遅延もよくあるトラブルです。
不動産の売買では、決済日に買主が売主へ残代金を支払います。
しかし、資金の振込が遅れると物件の引き渡しが延期されるなどの問題が生じます。
特に、ネット銀行を利用する場合、1日の振込限度額が設定されており、高額な不動産取引ではこの上限を超えるケースがあります。
また、現金での支払いを希望する場合、銀行の現金在庫が不足していることもあるため、事前に銀行に連絡して必要な金額を用意してもらうよう手配しましょう。
これらの準備を怠ると決済がスムーズに進まず、取引全体に影響を及ぼす可能性があります。
対策:振り込むべき資金や金額を整理しておく
対策として、振り込むべき資金や金額を整理しておきましょう。
具体的には、決済日までに必要な支払い額を明確にし、各費用の詳細をリストアップします。
また、振込先の銀行口座情報や振込手数料の有無、振込限度額なども確認しておくと安心です。
さらに、振込手続きに必要な時間を考慮し、余裕を持って準備を進めることが求められます。
これらの対策を講じることで、振込遅延によるトラブルを未然に防げます。
不動産決済のトラブル③:登記手続きのミス
登記手続きのミスによるトラブル事例もあります。
例えば、登記書類の不備や必要書類の不足が原因で、所有権移転が遅れることがあります。
スムーズに登記を完了させるためにも、必要な登記や対策を確認しておきましょう。
必要な登記
不動産決済時に売主が行う主な登記は「抵当権抹消登記」です。
抵当権抹消登記とは、住宅ローンを組んだ際に、担保として購入不動産に設定された抵当権を抹消するための手続きです。
抵当権とは、お金を借りる際に不動産を担保として設定し、返済ができなくなった場合にその不動産を売却して優先的に返済を受ける権利のことです。
抵当権が残ったままだと、不動産の売却や所有権移転ができないため、決済時には抵当権の抹消手続きが必要なのです。
対策:不動産会社や司法書士へ相談しておく
抵当権抹消登記は、自分でも手続きできますが一般の方には難しいので司法書士へ依頼するのが一般的です。
そのため、抵当権の付いている不動産を売却する際は、事前に不動産会社へ相談して司法書士を紹介してもらうのがよいでしょう。
不動産決済のトラブル④:売主の印鑑忘れ
次は、売主の印鑑忘れによるトラブルです。
実は印鑑忘れによるトラブルは多く、決済前日に用意していたにもかかわらず、当日になり忘れてしまうケースも少なくありません。
決して他人事ではないため、確実に準備しておきましょう。なお、実際の体験談をご紹介するので参考にしてみてください。
印鑑忘れの体験談
実際に印鑑を忘れた方の体験談をご紹介します。
雨の中チャリ漕いで不動産屋行って部屋の更新してきたんですけど、アホなので印鑑を忘れ更には行きがけにおろそうと思ってた更新料も忘れたため、不動産屋付いてから印鑑を買いに行き手数料を払ってコンビニでお金をおろして無事手続き済ませた。
— にゆ (@nyu_uua) September 24, 2020
ワイくん、不動産屋に印鑑を持っていくのを忘れ、
7件ハシゴしてやっと認印を手に入れることに成功— わっしー (@wassy3103) March 27, 2020
このように、決済当日に印鑑を忘れてしまう人はいます。
決済当日は緊張や準備などが重なり、つい印鑑を忘れてしまいがちです。
前日のうちにカバンに入れておくなどして忘れないようにしましょう。
対策:前日までに印鑑を用意しておく
印鑑を忘れないためにも以下の対策をしましょう。
- 事前に持ち物リストを作成
- 印鑑は専用ケースに保管
- 決済日直前に再確認
- 家族や信頼できる人にダブルチェックを依頼
- 予備の印鑑を準備
これらの対策をしておけば、確実に印鑑忘れを防げるでしょう。
不動産決済のトラブル⑤:契約内容の認識違い
契約内容の認識違いは、不動産決済でよくあるトラブルです。
売主と買主で契約条件の解釈が異なり、引き渡し直前に問題が発覚するケースがあります。
例えば、設備の引き渡し範囲や修繕の有無などです。
事前に契約書を双方で細かく確認し、曖昧な点は明確にしておきましょう。
また、口頭だけでなく書面で合意事項を残すことで誤解を防げます。
対策:売買契約を結ぶ前に買主と何度も確認し合っておく
契約に関するトラブルを避けるためにも、売買契約を結ぶ前に買主と何度も確認し合いましょう。
具体的には、物件の状態や設備、取引条件などを詳細に説明し、買主の理解を得ることが求められます。
また、売買契約書には物件の現状を正確に記載し、双方の認識を一致させましょう。
不動産決済のトラブル⑥:税金の未払い
不動産決済時に税金の未払いが発覚すると、取引が中断するリスクがあります。
売主は事前に税金の支払い状況を確認し、未払いがないことを証明する書類を準備しましょう。
税金未払いは信頼を損ない、最悪の場合は契約破棄にもつながります。
税金の種類
不動産を売却する際、売主として知っておくべき税金は主に以下の3種類です。
- 印紙税
- 登録免許税
- 固定資産税
印紙税は、不動産の売買契約書を作成する際、その契約書に貼付する収入印紙にかかる税金です。
登録免許税は、売却に伴い、抵当権の抹消登記などの手続きを行う際に必要となる税金です。
固定資産税は、不動産所有者に課される税金です。
それぞれの税金は決済時に支払うため、未払いの状態だと決済が遅れる可能性があります。
対策:支払うべき税金を把握しておく
税金未払いトラブルを防ぐには、事前に必要な税金を把握することが重要です。
売却時には印紙税や登録免許税、固定資産税の精算が発生します。
事前に税理士や不動産会社に確認し、決済日までに納税の準備を進めましょう。
不動産決済のトラブル⑦:物件の瑕疵(欠陥)発覚
決済当日や決済後に物件の瑕疵が発覚するのも、よくあるトラブル事例です。
そもそも、売主は契約内容に適合しない瑕疵が発覚した場合、その部分について責任を問われる可能性があり、これを契約不適合責任といいます。
契約不適合責任に問われると、契約解除や損害賠償請求される恐れがあるため、決済までに瑕疵がないか確認することが大切です。
瑕疵に該当するもの
瑕疵に該当する代表的なものは、雨漏りやシロアリ被害、構造上の欠陥などです。
これらが発覚すると買主は快適に生活できなくなるため、売主が責任を取らなければなりません。
隠して取引を進めると、後から損害賠償を請求されることもあるため、十分に理解しておきましょう。
対策:建物の状態を専門家に診断してもらう
契約不適合責任に問われないためにも、建物の状態を専門家に診断してもらいましょう。
ホームインスペクションを利用すれば、専門家により住宅診断を受けられるため、建物にある瑕疵を発見できます。
費用はかかるものの、契約後のトラブルを避けるためにも確実に受けておきましょう。
不動産決済のトラブル⑧:不動産会社との連絡ミス
不動産の売却時、仲介会社との連絡ミスは売主にとって大きな問題となります。
例えば、重要な書類の提出期限を知らされなかったり、買主からの要望が伝わらなかったりすると取引が遅延し、信頼関係に影響を及ぼします。
決済をスムーズに進めるためにも以下の対策を実践しましょう。
対策:担当者とこまめに連絡を取り合う
連絡ミスによるトラブルを防ぐために、担当者とこまめに連絡を取り合いましょう。
売主として、進捗状況や必要な手続きについて定期的に確認することが大切です。
例えば、書類の不備や手続きの遅れは、決済の遅延や契約の不成立につながる可能性があります。
また、疑問点や不安な点があれば、すぐに担当者に相談することで問題の早期発見と解決が可能です。
不動産決済のトラブル⑨:土地境界の不明確
不動産決済時、土地の境界が不明確だと、売主にとって大きな問題となります。
境界がはっきりしないと買主は購入をためらい、売却が遅れる可能性があります。
また、隣地の所有者と境界をめぐる争いが起こることも考えられます。
対策:土地家屋調査士に依頼して境界を明確にする
土地家屋調査士に依頼して境界を明確にしましょう。
土地家屋調査士は、土地調査のスペシャリストであり、正確に境界を測定してくれます。
境界のトラブルは不動産売買で多く見られるため、事前に明確にしておきましょう。
不動産決済のトラブル⑩:地中埋設物の発覚
売却後に土地の地下から予期しない埋設物が見つかると、売主として責任を問われる可能性があります。
特に、土地の売却や古い家の売却の場合に見つかりやすいため、事前に調査しておきましょう。
地中埋設物とは
地中埋設物とは、土地の地下に隠れたまま存在するガラや廃材、コンクリート片、古い配管などのことです。
売却後に発覚すると撤去費用や工事の遅延が発生し、売主に責任が問われる場合があります。
売却前に土地の状態をしっかり確認し、必要なら事前に専門業者に調査を依頼しましょう。
対策:専門業者へ依頼して調査してもらう
地中埋設物を調べるためにも、専門業者へ依頼しましょう。
代表的な専門業者は以下のとおりです。
これらの業者は、専用のレーダー機器を使用し、地下の異物や障害物を調査します。
調査費用は業者や土地の広さによって異なるため、事前に複数の業者から見積もりを取ると安心です。
不動産決済のトラブル⑪:住宅ローン審査の遅延
買主の住宅ローン審査の遅延によるトラブルもあります。
買主が住宅ローンの審査に通らなければ購入できないため、決済も完了できません。
トラブルなく決済を完了させるためにも以下の対策を講じましょう。
対策:買主の経済事情をできるだけ把握しておく
買主の経済事情をできるだけ把握しましょう。
住宅ローン審査の基準は、年収や職業、家族構成、年齢などさまざまな要素が含まれます。
その中でも特に年収や職業は審査に大きく影響するポイントのため、売主は買主の推定年収や職業をできるだけ把握することが大切です。
経済事情を把握できれば、「本当にこの人は問題なく買えるのか」を判断できます。
もし、経済事情に不安を感じれば売買契約を結ばない選択肢もできます。
まだ売買契約を結んでいないのであれば、職業や推定の年収を買主に聞いてみましょう。
不動産決済のトラブルにより決済が中止になる原因
不動産決済のトラブルにより決済が中止になるケースもあります。
ここでは、売主と買主の原因について解説します。
売主の原因
売主の原因により決済が中止になるケースは以下のとおりです。
- 必要な書類の不備
- 印鑑忘れ
- 売却意思の急な撤回
特に、必要書類が揃っていない場合、決済手続きは進められません。
売主は事前に書類を確認し、万全の準備を整えることが大切です。
また、契約時に交わした内容を最後まで履行する強い意志も求められます。
準備不足や急な心変わりは、買主に多大な迷惑をかけるため注意が必要です。
買主の原因
買主の原因により決済が中止になるケースは以下のとおりです。
- 資金不足
- 必要書類の不備
- ローン審査の問題
買主の場合、決済時に支払うべき資金が不足しているケースがあります。
資金が用意できなければ購入できないため、決済は中止となります。
また、売主と同様に必要書類の不備も中止の原因です。
さらに、住宅ローン審査の問題がある場合も購入できないため、決済が遅れたり中止になったりします。
不動産売買における決済トラブルの相談先
不動産売買における決済トラブルが起きた際は以下へ相談しましょう。
- 仲介先の不動産会社
- 弁護士
- 司法書士
- 各都道府県の不動産関連相談窓口
- 国民生活センター
仲介先の不動産会社
不動産売買の決済時にトラブルが発生した場合、まずは取引を仲介した不動産会社に相談するのが一般的です。
例えば、手続きの遅延や書類の不備などの問題が生じた際、迅速に解決策を提示してくれます。
相談の際は、トラブル内容や現在の状況を具体的に説明して、指示を待ちましょう。
弁護士
法律に関するトラブルが起きた際は弁護士へ相談しましょう。
弁護士は法律の専門家であり、問題の解決に向けて適切な助言や対応を提供してくれます。
例えば、契約内容の確認や修正、相手方との交渉、必要に応じて法的手続きを進めることができます。
特に不動産取引に詳しい弁護士であれば、複雑な問題にも的確に対応してくれるでしょう。
司法書士
司法書士は、不動産取引における専門家であり、登記手続きや契約内容の確認など、法律面でのサポートを提供します。
例えば、決済当日に必要な書類の不備や、登記に関する問題が発生した際、司法書士は迅速に対応し、取引が円滑に進むよう助けてくれます。
また、売主や買主の意思確認を行い、取引の安全性を確保する役割も担っています。
各都道府県の不動産関連相談窓口
各都道府県の不動産関連相談窓口に相談するのも有効です。
これらの窓口では、不動産取引に関する問題や疑問に対して、専門家が無料でアドバイスを提供しています。
例えば、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)は、各都道府県に宅地建物取引業協会を設置し、不動産無料相談所を運営しています。
相談内容や対応時間は各都道府県で異なるため、事前に電話で確認するとスムーズです。
また、公益社団法人全日本不動産協会の「全日不動産相談センター」では、電話による相談も受け付けています。
これらの窓口を活用することで、専門的な知識がなくても安心して不動産取引に関する悩みを解決できます。
国民生活センター
国民生活センターは、消費者からの相談を受け付け、問題解決のサポートを行う公的機関です。
不動産取引に関するトラブルや疑問についても、専門の相談員が親身に対応してくれます。
例えば、「強引に自宅の売却を迫られた」「契約内容が理解できないまま進められた」といったケースでも、適切なアドバイスを提供しています。
不動産売買の決済トラブルで困ったときは、まず国民生活センターに相談してみましょう。
不動産売買における決済トラブルに関するよくある質問
不動産売買における決済トラブルに関するよくある質問をご紹介します。
決済を控えている方は参考にしてみましょう。
- 不動産の決済に立ち合えない場合、どうすればいいですか?
- 不動産売買の決済を遅延した場合の損害額は?
- 不動産決済時のトラブルで裁判になることはありますか?
不動産の決済に立ち合えない場合、どうすればいいですか?
不動産の売買で決済に立ち会えない場合、代理人を立てる方法があります。
信頼できる家族や親族を代理人に選び、委任状を作成して手続きを任せます。
また、事前に司法書士と面談し、必要な書類の確認や署名・押印を済ませておくことも重要です。
これらの準備をおこなうことで、本人が不在でも安全に決済手続きを進められます。
不動産売買の決済を遅延した場合の損害額は?
損害額は、売買価格の10%から20%とされることが多いです。
一般的に、売買契約書には遅延時の損害賠償額や違約金が定められており、これが売買価格の10~20%に定められているケースが多いためです。
また、遅延期間に応じて日割りで損害金が加算されるケースもあります。
例えば、売買代金が3,000万円の場合、10%の違約金は300万円となります。
さらに、遅延が長引くと追加の損害金が発生する可能性があります。
これらの取り決めは契約書に明記されているため、契約前に内容を十分に確認し、遅延が発生しないようスケジュール管理を徹底することが重要です。
不動産決済時のトラブルで裁判になることはありますか?
決済時にトラブルが発生し、裁判に至るケースがあります。
例えば、買主が売買代金を支払わない場合、売主は契約を解除し、違約金を請求できます。
また、売主が必要な書類を準備せず、引き渡しが遅れると、買主から損害賠償を求められる場合もあります。
これらのトラブルは、契約内容の確認や適切な準備を怠ると起こりやすくなります。
事前に専門家に相談し、慎重に手続きを進めましょう。
まとめ:不動産決済のトラブルを理解してスムーズに決済を完了させましょう!
不動産決済のトラブル事例や対策を解説しました。
不動産の決済は、売買代金の支払いや登記手続きなどをおこなう、取引の最終段階です。
ここでトラブルが起きれば、取引が遅れたり買主から契約解除されたりする可能性があります。
高額なお金が動く場面でもあるため、必要書類を用意したり決済の流れを理解したりすることが大切です。
決済を控えている方は、ぜひこの記事を参考に決済を進めてみましょう!