- どの媒介契約を結べばいいか分からない……。
- 一般媒介契約の魅力ってなに?
- 一般媒介契約が向いているケースを教えて!
家の売却にともない、どの媒介契約を結ぼうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
媒介契約には、「一般媒介契約」「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」がありますが、それぞれの意味を理解していない人も少なくありません。
そこでこの記事では、一般媒介契約に特化して、その意味や魅力を詳しく解説します。
この記事を読めば、一般媒介契約の意味を理解できるだけでなく、「自分に一般媒介契約は向いているのか」まですべてわかります。
一般媒介契約の魅力を理解したうえで、契約するかどうか判断してみましょう!
そもそも媒介契約とは
媒介契約とは、不動産の売買や賃貸を希望する際に不動産会社に仲介を依頼するための契約です。
不動産の媒介契約とは、不動産を売り買いする際、その売主や買主が、取引の仲介を依頼する不動産業者(宅地建物取引業者)との間で締結する契約のことです。
引用:国土交通省「不動産取引の媒介契約って?」
この契約を結ぶことで不動産会社は物件の宣伝や買主・借主の紹介、契約手続きのサポートなどを依頼主に代わっておこないます。
また、契約内容には、依頼する不動産会社の数や情報公開の範囲、報告義務などが含まれ、スムーズに売却活動を進められます。
不動産売買は非常に高額な取引となるケースが多いため、不動産を売る際は媒介契約を結ぶのが一般的です。
一般媒介契約とは
一般媒介契約とは、不動産を売却する際に複数の不動産会社と同時に契約できる契約形態です。
こ の 約 款 に お い て 、「 一 般 媒 介 契 約 」 と は 、 甲 が 依 頼 の 目 的 で あ る 宅 地 又 は 建 物
( 以 下 「 目 的 物 件 」 と い い ま す 。) の 売 買 又 は 交 換 の 媒 介 又 は 代 理 を 乙 以 外 の 宅 地
建 物 取 引 業 者 に 重 ね て 依 頼 す る こ と が で き る も の と す る 媒 介 契 約 を い い ま す 。引用:国土交通省「宅 地 建 物 取 引 業 法 施 行 規 則 の 規 定 に よ る 標 準 媒 介 契 約 約 款」
ほかの不動産会社のサービス内容や売却価格を比較できるのが大きな特徴で、比較的自由度の高い契約です。
また、売主自身で買主を見つけて直接取引できます。ただし、やり取りの窓口が増える点や各社の販売活動の状況が把握しづらい点には注意が必要です。
専任媒介契約や専属専任媒介契約と比べて縛りの少ない契約のため、「自分のペースで売却したい」「自由に売却活動を進めたい」という方に向いています。
一般媒介契約のメリット
一般媒介契約には以下のメリットがあります。
- ほかの不動産会社とも契約できる
- 自分で買主を見つけられる
- 契約期間の制限がない
- 不動産会社同士で競わせられる
それぞれを詳しく解説します。
ほかの不動産会社とも契約できる
一般媒介契約の最大の特徴は、複数の不動産会社と同時に契約できる点です。
複数社と契約することで各社のサービスや担当者の質、売却価格などを比較しながら売却活動を進められます。
1社だけの場合、「本当に信用できるのかな?」と不安に思う方もいるでしょう。それでも一般媒介契約なら各社の対応を比較できるのため、安心して契約する不動産会社を決められます。
自分で買主を見つけられる
自分で買主を見つけられるのも一般媒介契約のメリットです。
買主探しを不動産会社へ任せっきりにしている場合、買主を見つけるまでに数ヵ月かかるケースがあります。
その点、一般媒介契約なら不動産会社だけでなく自分でも買主を探せるため、より早く買主を見つけられる可能性が高まります。
家族や親戚、友人や知人など、身近な人が買い手として現れる場合もあるため、より幅広く買主探しをしたい方は一般媒介契約がおすすめです。
契約期間の制限がない
一般媒介契約には契約期間の制限がありません。
専任媒介契約と専属専任媒介契約には「最大3ヵ月」の契約期間が設けられます。基本的には契約期間中に売却活動を完了させるため、時間的に余裕がなくなるケースもあります。
その点、一般媒介契約には期間制限がないため、余裕を持って売却活動できます。
「早く買主を探さないと契約が終わってしまう」と焦る必要もないため、落ち着いて売却活動を進められるのが魅力です。
なお、契約期間の制限がないとされているものの、国土交通省の規定では「3ヵ月を超えない範囲での契約が望ましい」とされています。
一 般 媒 介 契 約 の 有 効 期 間 は 、 3 ヶ 月 を 超 え な い 範 囲 で 、 甲 乙 協 議 の 上 、 定 めま す 。
引用:国土交通省「一 般 媒 介 契 約 約 款」
不動産会社同士で競わせられる
不動産会社同士で競わせられるのも大きな魅力です。
一般媒介契約は複数社と媒介契約できるため、各社は「自分が本契約を取るんだ」と競うように売却活動を進めてくれます。
競わせることで、より良い買主を見つけてきてくれたり売却価格が高騰したりするケースもあります。
特に、「立地条件の良い不動産」や「築浅で人気の不動産」などは買主が現れやすいため、需要のある不動産を売ろうとしている方におすすめです。
一般媒介契約のデメリット
一般媒介契約には以下のようなデメリットもあります。
- 不動産会社が消極的になる可能性がある
- やり取りの窓口が増える
- 指定流通機構に登録する義務がない
- 業務報告の義務がない
メリットと併せて確認しておきましょう。
不動産会社が消極的になる可能性がある
一般媒介契約は複数社と媒介契約できる反面、各社が消極的になる可能性もあります。
一般媒介契約の場合、複数社が売却活動をおこなうため、労力をかけて買主探しをおこなっても先に他社に買主を見つけられてしまえば依頼主と本契約できません。
つまり、費用や手間をかけて売却活動をしたとしても、先に買主を見つけなければ労力が無駄になってしまいます。
不動産会社としては、「無駄な労力をかけてまで買主を探さなくていい」と判断するケースも多く、積極的に活動してくれなくなる場合があるのです。
特に、「立地条件が悪い」「築年数が経過しすぎている」などの需要の少ない物件の場合は、仮に本契約を取れても報酬が少ないため、確証の無い売却活動には消極的になる傾向があります。
やり取りの窓口が増える
やり取りの窓口が増えるのも一般媒介契約のデメリットです。
一般媒介契約は基本的に複数の不動産会社と媒介契約を結ぶため、それぞれの担当者と随時連絡を取らなければなりません。
売却活動の報告、広告掲載の旨、買主の発見報告など、依頼主と担当者の間ではさまざまなやり取りがおこなわれます。
しかし、契約している不動産会社の数が多ければ、その分やり取りの手間もかかるため、売却に迷いが生じたり面倒になったりする場合もあります。
複数の不動産会社と比較できる反面、このような手間も増えることを理解しておきましょう。
指定流通機構に登録する義務がない
一般媒介契約は、売り出し物件を指定流通機構に登録する義務がありません。
乙 は 、 こ の 媒 介 契 約 に お い て 目 的 物 件 を 指 定 流 通 機 構 に 登 録 す る こ と と し た場 合 に あ っ て は 、 当 該 目 的 物 件 を 一 般 媒 介 契 約 書 に 記 載 す る 指 定 流 通 機 構 に 登 録 しな け れ ば な り ま せ ん 。
引用:国土交通省「一 般 媒 介 契 約 約 款」
ちなみに、指定流通機構への登録が義務付けられている専属専任媒介契約では、以下のように記載されています。
広 く 契 約 の 相 手 方 を 探 索 す る た め 、 目 的 物 件 に つ き 、 所 在 地 、 規 模 、 形 質 、 媒介 価 額 そ の 他 の 事 項 を 、 専 属 専 任 媒 介 契 約 書 に 記 載 す る 指 定 流 通 機 構 に 媒 介 契 約の 締 結 の 日 の 翌 日 か ら 専 属 専 任 媒 介 契 約 書 に 記 載 す る 期 間 内 ( 乙 の 休 業 日 を 含 みま せ ん 。) に 登 録 す る こ と 。
引用:国土交通省「専 属 専 任 媒 介 契 約 約 款」
指定流通機構(REINS)は、契約した不動産情報や現在売り出されている不動産情報が掲載されている不動産会社専用の情報サイトです。
全国の不動産会社は、REINSに掲載されている不動産情報をもとに買主へ物件紹介します。しかし、一般媒介契約ではREINSへの登録が義務付けられていません。
つまり、REINSへ登録されていない以上、買主側の不動産会社に発見してもらいにくくなるということです。
専属専任媒介契約や専任媒介契約であれば、売却物件のREINSへの登録が義務付けられているため、買主が見つかりやすいです。
一般媒介契約は自由度が高い一方で、このようなデメリットがあることも理解しておきましょう。
業務報告の義務がない
一般媒介契約は、売却活動の業務報告の義務もありません。
「どのような状況なのか」「どんな売却活動をしているのか」など、不動産会社は依頼主へ報告する義務がないのです。
専属専任媒介契約や専任媒介契約であれば業務報告義務があるため、定期的に売却活動の報告を受けられます。しかし、一般媒介契約ではその義務がないため、担当者によっては全く報告してこないケースもあります。
売却活動の報告を随時受けたい場合は、専属専任媒介契約か専任媒介契約にした方がよいでしょう。
その他の媒介契約との違い比較
媒介契約には、一般媒介契約以外にも「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」があります。
ここでは、それぞれの特徴を一覧でご紹介します。どのような違いがあるのか把握しておきましょう。
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
他社との契約 | × | × | 〇 |
買主の自己発見取引 | 〇 | × | 〇 |
REINSへの登録義務 | 契約から7営業日以内に登録 | 契約から5営業日以内に登録 | 登録義務なし |
業務状況の報告義務 | 2週間に1回以上の報告義務 | 1週間に1回以上の報告義務 | 報告義務なし |
契約期間 | 3ヶ月 | 3ヶ月 | 期間制限なし |
表を見てもわかるように、一般媒介契約だけ自由度が非常に高いです。ただし、REINSへの登録義務や業務報告義務がないため、不動産売却が初めての方にとっては不安を感じやすい契約形態といえます。
それぞれの契約の特徴を理解したうえで、自分に合う媒介契約で進めてみましょう。
一般媒介契約が向いているケース
ここまで一般媒介契約の魅力やデメリットを解説しましたが、「一般媒介契約はどんな人に向いてるの?」と思う方も多いでしょう。
ここでは、一般媒介契約が向いているケースを3つご紹介します。以下のケースに該当する方は一般媒介契約を選択した方がよいかもしれません。
- 買主が付きやすい物件を売る場合
- 複数の不動産会社の売却価格を比較したい場合
- 売却を急いでいない場合
ケース①:買主が付きやすい物件を売る場合
以下のような物件を売る場合は、一般媒介契約が向いています。
- 築年数が浅い物件
- 利便性がよい物件
- 将来性のある土地にある物件
これらの物件は特に買主が付きやすく、普通の物件よりも早く高く売れやすいです。
買主が付きやすい物件は買主同士で競争が起き、売却価格が高騰するケースも少なくありません。
また、売却価格が高騰すれば、不動産会社が報酬として受け取る「仲介手数料」も高額になるため、必然と不動産会社も積極的に売却活動をおこなってくれます。
積極的に売却活動をしてくれれば、買主の早期発見だけなく不動産会社同士で競争が起き、高額売却できる可能性も高くなるでしょう。
このように、買主の付きやすい需要のある物件を売る場合は一般媒介契約が向いています。
ケース②:複数の不動産会社の売却価格を比較したい場合
複数の不動産会社の売却価格を比較したい場合にも一般媒介契約が向いています。
一般媒介契約は複数社と媒介契約できるため、売却価格やサービス内容、担当者の質などを比較できるのが特徴です。
不動産会社といっても、実績や運営歴、担当者の経験などバラバラで、100%信用できるとは言い切れません。
なかには悪質な不動産会社も存在するため、複数社と比較しながら売却活動を進めるのがよいでしょう。
ケース③:売却を急いでいない場合
売却を急いでいない場合も一般媒介契約が向いています。
一般媒介契約は契約期間の制限がないため、じっくり売却活動できるのが特徴です。
専属専任媒介契約や専任媒介契約の場合、最大3ヵ月の契約期間が設けられるため、どうしても売却活動が忙しくなりがちです。
また、上記の媒介契約だと担当者からの業務報告も義務付けられているため、定期的に担当者と連絡を取り合う必要もでてきます。
その点、一般媒介契約なら業務報告義務がないため、自分のペースで落ち着いて売却を進められます。
「とりあえず売り出してみたい」「買主が現れれば売ってもいい」など売却を急いでいない方は、一般媒介契約を選択した方がよいでしょう。
購入時の媒介契約はほとんどが一般媒介契約
売却時の一般媒介契約について解説してきましたが、実は購入時にも媒介契約は締結します。
不動産の購入の媒介契約とは、宅地建物取引業者が不動産を購入しようとする者又は売
買契約の当事者の双方との間で締結する契約で、宅地建物取引業者が不動産売買の当事者
の間に立って、売買契約の成立に向けてあっせんすることを内容とします。引用:国土交通省「不動産の購入を検討される皆様へ(購入の媒介委託者用)」
購入時は売却時と違って「買主探し」や「広告掲載」などの売却活動がないため、売却時よりも簡単に進められるのが特徴です。
そのため、専任媒介契約や専属専任媒介契約のような「1社のみと契約する」というのは買主にとって不利であり、基本的には一般媒介契約を締結します。
一般媒介契約を締結することで各社の紹介物件を比較でき、いくつかの選択肢の中から理想の物件を選べるようになります。
もし、今後不動産を購入する立場になったら、一般媒介契約を選択しましょう。
一般媒介契約に関するよくある質問
一般媒介契約に関するよくある質問をご紹介します。
一般媒介契約についての疑問や不安を参考にしてみましょう。
- 一般媒介契約と仲介における手数料の違いは?
- 一般媒介契約のよくあるトラブルは?
- 一般媒介契約の注意点は?
一般媒介契約と仲介における手数料の違いは?
一般媒介契約でも仲介でも、依頼主の間に立ち、契約を進めることに変わりはありません。
不動産売却の場合、一般媒介契約後に特定の不動産会社が紹介した買主と売買契約を締結すれば、紹介してきた不動産会社へ仲介手数料を支払います。
また、不動産会社の仲介により買主と売買契約を締結できた場合も、報酬として仲介手数料を支払います。
「媒介契約」と「仲介」は似たような意味のため、どちらの手数料にも違いはありません。
なお、媒介契約や仲介だけでは仲介手数料は支払う必要がなく、あくまでも「売買契約が成立した」場合のみ、仲介手数料を支払います。
一般媒介と仲介手数料の違いについては「一般媒介と仲介手数料の違いってなに?」をご覧ください。
一般媒介契約のよくあるトラブルは?
- やり取りの窓口が多いから連絡の手間が増える
- いつまでも売れない
- 売却活動の状況を把握できない
一般媒介契約は複数社と媒介契約を結べるため、やり取りの窓口が増えて煩雑になるケースがあります。
平日や休日を問わず担当者から連絡が入る場合もあるため、面倒に感じるかもしれません。
また、専属専任媒介契約や専任媒介契約よりも不動産会社の売却活動が消極的なるケースも多いため、いつまでも売れない状況になる場合もあります。
さらに、業務報告義務もないため、売却活動について報告してこない不動産会社も存在します。
「早く売りたい」「不安だから売却状況を定期的に報告してほしい」という方は専属専任媒介契約や専任媒介契約を選択した方がよいでしょう。
一般媒介契約の注意点は?
一般媒介契約を結ぶと、依頼主の代わりに不動産会社が売却活動を開始します。
広告掲載やREINSへの物件登録など、さまざまな手法で買主を探してくれます。しかし、前述のとおり一般媒介契約は複数の不動産会社と媒介契約できるため、手間や費用をかけたにもかかわらず、ほかの不動産会社が先に買主を見つけてしまうケースがあります。
この場合、売主が買主と売買契約を締結すれば、買主を見つけてきた不動産会社へ報酬として仲介手数料を支払うことになります。
つまり、買主を見つけられなかった不動産会社は、手間や費用をかけたにもかかわらず報酬はゼロ。努力が水の泡となってしまうのです。むしろ、広告掲載料や移動費などを使っているので赤字となるでしょう。
このような理由から、一般媒介契約は不動産会社にとってリスクのある契約形態であり、専任媒介契約や専属専任媒介契約のような「自社とだけ契約する」契約よりも優先度が低くなってしまうといえます。
複数社と媒介契約できたり契約期間に制限がなかったりするなどのメリットがある一方で、「不動産会社の優先度が低くなる」という大きなデメリットがあることを理解しておきましょう。
まとめ:一般媒介契約の特徴や注意点を理解したうえで依頼しよう!
一般媒介契約のメリットやデメリット、注意点について解説しました。
一般媒介契約は、「複数社と媒介契約できる」「契約期間の制限がない」などのメリットがある一方で「不動産会社が消極的になる」「売却活動の状況を把握しにくい」などのデメリットもあります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約よりも自由度が高いものの、状況によっては「放置されている」と感じてしまう場合もあります。
それでも、人気エリアにある物件や築浅物件など、買主人気のある物件であれば買い手側が競争するため、高額売却も可能です。
売却時期や売却物件によっては一般媒介契約が適切なケースもあるため、自分の状況を把握したうえで一般媒介契約を選択するかどうか判断した方がよいでしょう。
媒介契約は、売却が成功するかどうかを左右する大きな要素です。判断を誤らないためにも、ぜひこの記事を参考に売却活動を始めてみてください!