- 不動産を売却したら税金はいくらかかるの?
- 税金にはどれくらい種類があるの?
- 税金を安くする方法を教えて!
不動産を売却した方、売却を検討している方でこのような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
不動産を売却した時はさまざまな税金がかかりますが、いくらかかるのか理解していない人も少なくありません。
そこでこの記事では、不動産を売却したときにかかる税金や税金の計算方法などを詳しく解説します。
この記事を読めば、税金がいくらかかるのか、どんな税金があるのか、節税方法などがすべてわかります。
不動産売却における税金について詳しく知りたい方はぜひ最後までご覧ください!
【譲渡所得税】不動産を売却した時の税金はいくら?
まずは、不動産を売却したときにかかる譲渡所得税について解説します。
例えば、2,000万円で購入した家を3,000万円で売却した場合、黒字分の1,000万円が「譲渡所得」となります。
そして、譲渡所得に一定の税率をかけたものが譲渡所得税です。
譲渡所得税の税率は売却した不動産の所有期間によって以下のように異なります。
譲渡所得の種類 | 所有期間 | 税率 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年超 | 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 所得税30%+住民税9%+復興特別所得税 |
それぞれの所得について解説します。
所有期間5年超:税率20.315%
売却した不動産の所有期間が5年を超えている場合の税率は、20.315%です。(復興特別所得税を含めています)
内訳は、所得税15%、住民税5%であり、長期間所有していた不動産を売却すると税率が低くなります。
例えば、先ほどのケースの「譲渡所得1,000万円」に当てはめると以下の税額となります。
つまり、長期譲渡所得の場合の譲渡所得税は「約200万円」となります。
所有期間5年以下:税率39.63%
所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり、税率は39.63%です。
内訳は、所得税30%、住民税9%であり、長期譲渡所得と比べて約2倍もの税率となります。
「譲渡所得1,000万円」に当てはめてみましょう。
短期譲渡所得の場合の譲渡所得税は「約400万円」です。
やはり、譲渡所得税額も長期譲渡所得と比べて2倍近く高くなるため、税金を抑えたいのであれば、5年を超える期間所有してから売却した方がよいでしょう。
売却して利益が出なかった場合は譲渡所得税はかからない
譲渡所得税について解説しましたが、そもそも不動産を売却して利益が出なければ譲渡所得税はかかりません。
例えば、当時3,000万円で購入した不動産を2,000万円で売却した場合、1,000万円の赤字となります。
このケースでは、譲渡所得ではなく譲渡損失であるため、譲渡所得税はかからないのです。
「不動産を売る=譲渡所得税がかかる」わけではないため、注意しましょう。
【譲渡所得税】不動産を売却した時の税金の計算手順
譲渡所得税は以下の手順で計算します。
- 売却価格・取得費・譲渡費用を調べる
- 譲渡所得を計算する
- 譲渡所得に税率をかける
それぞれの手順を詳しく解説します。
STEP①:売却価格・取得費・譲渡費用を調べる
まずは、売却した不動産における「売却価格」「取得費」「譲渡費用」を調べましょう。
売却価格は、実際に不動産を買主へ売却した価格であり、売買契約書に記載されています。
取得費とは、売却した不動産を当時購入した際にかかった費用のことであり、以下のような費用が該当します。
【取得費に含まれるもの】
- 購入代金
- 仲介手数料
- 登記費用
- 修繕費
取得費を証明するには当時の売買契約書や領収書などが必要です。
最後に譲渡費用です。譲渡費用とは、今回の不動産売却にかかった諸費用を指します。
【譲渡費用に含まれるもの】
- 仲介手数料
- 登記費用
- 測量費
- 解体費用
譲渡費用も取得費と同様に、売買契約書や領収書が必要なので準備しておきましょう。
STEP②:譲渡所得を計算する
次に譲渡所得を計算しましょう。譲渡所得は以下の計算方法で求めます。
(例)売却価格:3,000万円、取得費:500万円、譲渡費用:150万円
つまり、上記の例での譲渡所得は2,350万円となります。
STEP③:譲渡所得に税率をかける
譲渡所得を求めたら税率をかけましょう。
前述のとおり、不動産の所有期間によって税率は以下のように定められています。
譲渡所得の種類 | 所有期間 | 税率 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年超 | 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 所得税30%+住民税9%+復興特別所得税 |
先ほどの例に「所有期間20年」を追加して計算してみます。
つまり、今回のケースの場合では不動産売却によって470万円の譲渡所得税が課されるということです。
建物を売る場合は減価償却費を計算する
売却した不動産が建物である場合は、減価償却費を計算しなければなりません。
例えば、20年前に3,000万円で購入した木造建物があるとします。20年後の今年に売ろうとしても、同じ価値が残っているとは限りませんよね。
むしろ、雨風にさらされてきており、外壁や内装も劣化しているケースがほとんどです。つまり、20年前よりも価値が減少しているということです。
この減少幅を「減価償却費」と呼び、建物を売却する際に計算する必要があります。
しかし、減価償却費の計算は初めての方には難しいケースもあるため、税務署や税理士へ相談しながら計算するのをおすすめします。
まずは、前述したSTEP①~③までを理解しておけば十分です。
不動産を売却した時の税金に適用できる控除特例
不動産売却時にかかる税金に利用できる控除特例をご紹介します。
数百万円かかる税金を安くするためにも、以下の特例を活用しましょう。
- 3,000万円の特別控除
- 軽減税率の特例
- マイホームの買い替え特例
3,000万円の特別控除
例えば、不動産を売却して3,000万円の譲渡所得を得た場合、その3,000万円をゼロにできます。
控除特例のなかでも特に節税効果が大きく、譲渡所得を得ている際は活用したい特例です。
ただし、適用するには以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 実際に住んでいる
- ほかの特例を受けていない
- 前年、前々年に3,000万円特別控除を受けていない
- 前年、前々年にマイホーム買い替え特例を受けていない
- 親子間や夫婦間での売買でない
- 災害などによってその家に住まなくなってから3年後の12月31日までに売却できている
参考:国税庁
このように、いくつかの条件があるため、利用できるかどうか事前に確認しておきましょう。
軽減税率の特例
具体的には、売却した年の1月1日時点で10年以上所有している場合、所得税と住民税の合計税率が軽減されます。
長期譲渡所得の税率が20%(所得税15%、住民税5%)のところ、軽減税率特例を適用すると「所得税10%、住民税4%」まで下がり、合計税率は14%となります。
長期譲渡所得よりも税率を抑えられるため、より売却時の税金が安くなります。
ただし、適用するには以下の条件をすべて満たさなければなりません。
- 現に自分が住んでいる家屋
- 以前に住んでいた家屋
- 上記の家屋とともに売ったその敷地や借地権
参考:国税庁
詳しくは国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご覧ください。
マイホームの買い替え特例
例えば、今のマイホームを買い替えた際に譲渡所得税が発生した場合、買い替えた不動産を再度売却する際まで譲渡所得税の支払いを先延ばしにできます。
マイホームを買い替える際は、購入代金や引っ越し費用など、なにかとお金がかかります。「住宅ローンの返済もあるしお金がキツイな……。」と思う方もいるでしょう。
それでもこの特例を活用すれば、一時的ですが税金の支払いが不要となるため、金銭的負担を軽くできます。
マイホームの買い替えをスムーズにおこないたい方は活用しましょう。
詳しくは国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」をご覧ください。
【その他の税金】不動産を売却した時にかかる税金
不動産売却時にかかるその他の税金をご紹介します。
譲渡所得税以外にもいくつかあるので確認しておきましょう。
- 印紙税:5,000円~1万円
- 登録免許税:5~15万円
- 消費税:10%
印紙税:1~6万円
課税文書に該当する書類は以下のとおりです。
- 売買契約書
- 領収書
- 株券
- 債券
- 借用書
- 手形
また、課税文書に記載されている価格によって税額が以下のように定められています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
一般的な不動産売却であれば1,000~5,000万円前後のため、安いと1万円、高くても6万円となります。
登録免許税:1~2万円
登録免許税とは、不動産の登記手続きや法人設立などで公的な登記を行う際に課される税金です。不動産取引においては、所有権の移転や抵当権の設定などの登記をおこなう際に支払います。
不動産売却時に関しては、「抵当権抹消登記」の際にかかります。
料金は不動産一つにつき1,000円ですが、司法書士へ依頼するのであれば1~2万円前後かかります。
消費税:10%
不動産の取引時にも消費税10%はかかります。
売却価格自体には課税されませんが、不動産会社への仲介手数料には課税されるため、高額な売却になるほど消費税も高額になります。
「不動産を売却した時の税金はいくら?」に関するよくある質問
「不動産を売却した時の税金はいくら?」に関するよくある質問をご紹介します。
税金に関する疑問や不安を参考にしてみましょう。
- 不動産売却にかかる税金は確定申告が必要なの?
- 相続した不動産を売ったときも税金はかかるの?
- 相続不動産を売った時の税金はどの価格を基準にするの?
不動産売却にかかる税金は確定申告が必要なの?
印紙税や登録免許税などは取引の際に支払うので確定申告は不要です。しかし、譲渡所得税を納税する際や控除特例を利用する際は確定申告が必要です。
確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日までにおこなわなければなりません。申告を怠ると無申告加算税や延滞税が発生する可能性があるので注意が必要です。
詳しくは国税庁「所得税の確定申告」をご覧ください。
相続した不動産を売ったときも税金はかかるの?
自己所有の不動産を売却するのと同様に、相続不動産を売った際も譲渡所得税や印紙税などの税金はかかります。
ケースによっては3,000万円特別控除などの特例を利用できるため、有効活用しましょう。
詳しくは国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご覧ください。
相続不動産を売った時の税金はどの価格を基準にするの?
相続不動産を売却した際も譲渡所得税を計算しますが、この際に必要な「取得費」は、被相続人が当時購入した価格を参考にします。
例えば、自分の父親が当時2,000万円で不動産を購入していたとします。その不動産を相続して3,000万円で売却した場合は1,000万円の譲渡所得を得ることとなり、1,000万円に対して一定の税率をかけて譲渡所得税として課税されます。
しかし、当時の購入価格、その他の取得費などがわからない場合は『5%ルール』が適用されます。
具体的には、「売買価格の5%が取得費」となり、正確な取得費よりも節税効果が大きく薄れてしまう可能性があります。
取得費を正確に求めるためには、当時の売買契約書などが必要です。手元にあるのであれば取得費を確実に計算しておきましょう。
取得費がわからない方は、国税庁「取得費が分からないとき」をご覧ください。
まとめ:不動産を売却したときの税金を理解して節税しよう!
不動産を売却したときにかかる税金について解説しました。
不動産売却時は、譲渡所得税や印紙税、登録免許税などさまざまな税金がかかります。
特に譲渡所得税は高額になりやすいため、計算方法や「取得費」「譲渡費用」などを理解することが大切です。
また、譲渡所得税に対しては、いくつかの控除特例を利用できるケースがあるため、上手く活用できれば大きく節税できます。
不動産売却時は住宅ローンの返済や引っ越し費用、各種税金の支払いなどさまざまな費用がかかりますが、それぞれの意味や特徴を理解すれば初めての方でも安心して売却できます。
不動産売却を控えている方、すでに売却活動を始めている方は、ぜひこの記事を参考に各種税金について理解を深めておきましょう!