相続した不動産は焦って売ってはいけない!理由や3つのリスクを解説

相続した不動産は焦って売ってはいけない!
  • 不動産を相続したけど早く売りたい……。
  • 相続不動産って普通に売却できるの?
  • 売却時の税金を安くしたい!

不動産を相続すると、相続人が所有者となるため、住んでいなくても固定資産税などの税金が発生します。

そのため、「早く売却したい」と考える方も少なくありません。しかし、相続不動産を早く売却しようとすると思わぬトラブルに発展する可能性があります。

普通の不動産売却と何が違うの?
ウル蔵
宅建士のボクが、相続人の方に向けて詳しく解説するよ!

こんな人に読んでほしい

  • 相続不動産の処分に困っている
  • 売るべきか賃貸に出すべきか悩んでいる
  • そもそも不動産売却が初めてで不安
目次

相続した不動産は焦って売ってはいけない理由

相続した不動産は、焦って売ると損をする可能性があります。

そもそも、不動産の売却相場を調べずに進めると、実際の価値よりも大幅に安く売ってしまうケースがあります。

築年数や立地だけでなく、不動産会社によっても査定額が異なるため、必ず複数の会社に相談しましょう。

ウル蔵
相場が分からないと適正価格も把握できないよね

また、税金や必要書類の確認を怠ると、あとでトラブルになる恐れもあります。たとえば、譲渡所得税や登記の名義変更などは見落とされやすいポイントです。

空き家の維持費が気になっても、まずは冷静に情報を集め、現状を正しく把握しましょう。慌てて売却を進めるよりも、じっくり準備するほうが納得できる結果につながります。

スポンサーリンク

焦って売却すると損をする3つのリスク

相続不動産を焦って売却すると、以下3つのリスクが伴います。

  • 特例を見逃して税金が高くなる可能性
  • 市場価格より安く売ってしまう危険がある
  • 家族間でトラブルになる恐れがある

特例を見逃して税金が高くなる可能性

焦って家を売ると、税金の特例を受けられずに損をするおそれがあります。

たとえば、相続した空き家を売る場合、一定の条件を満たせば最大3,000万円まで税金がかからない「空き家の3000万円控除」を利用できる場合があります。しかし、期限内に必要な書類を集めて申請しないと、この特例は使えません。

ウル蔵
特に不動産売却が初めての人は見落としがちだ

売却を急ぎすぎたせいで書類が間に合わず、控除を受けられなかったという例もあります。その結果、本来払わなくてよかった税金を数十万円支払うことになり、大きな負担になることもあります。

特例を見逃さないためにも、売る前に制度を確認し、早めに準備を始めましょう。

市場価格より安く売ってしまう危険がある

焦って家を売却すると、市場価格より安く手放してしまうおそれもあります。特に、売却の期限が迫っていると、買い手に急いでいることが伝わりやすく、価格交渉で不利になりがちです。

ウル蔵
買主に足元を見られてしまうんだ

たとえば、周辺相場が3,000万円の家を2,700万円で売ってしまえば、300万円の損になります。さらに、広告期間が短いと購入希望者が集まりにくく、十分な比較検討ができません。結果として、値下げに踏み切らざるを得なくなる可能性もあります。

また、一度価格を下げると、買い手の印象が下がり、元の価格に戻すのが難しくなります。こうしたリスクを避けるためには、相場を把握し、時間に余裕を持って売却計画を立てることが大切です。

家族間でトラブルになる恐れがある

​​焦って不動産を売却すると、家族間でトラブルになる恐れもあります。たとえば、親子間で相場より安く売ると、他の家族から「不公平だ」と不満が出ることがあります。

また、売却価格が極端に安い場合は、税務署に贈与とみなされ、高額な税金がかかることもあります。さらに、急いで手続きを進めた結果、契約書の内容が不十分だったり必要な書類がそろっていなかったりすると、相続や登記で問題になる可能性もあります。

家を売るときは、家族との話し合いをしっかり行い、税金や書類の確認も含めて専門家に相談しましょう。

ウル蔵
相続人が複数人いる場合は特に注意しよう

相続した不動産の売却で注意すべき税金のしくみ

相続不動産の売却には税金がかかります。仕組みを理解して、節約できるかどうか判断しましょう。

  • 「譲渡所得税」とは?売却益にかかる税金の基本
  • 「取得費加算の特例」は相続から3年以内がカギ
  • 「空き家の3000万円控除」を活用できるか確認しよう

「譲渡所得税」とは?売却益にかかる税金の基本

相続した家を売って利益が出ると、「譲渡所得税」がかかる場合があります。

【譲渡所得税とは】

売却利益から元の購入費やリフォーム費用、売却時の手数料などを差し引いた金額に対して課税される税金

たとえば、親が2,000万円で購入した家を3,000万円で売った場合、差額の1,000万円が利益となり、課税の対象になります。

ウル蔵
1,000万円に対して約20~40%の税率がかかるぞ

ただし、相続不動産には「3,000万円の特別控除」などを使えるケースもあり、税負担を大きく減らせることがあります。

税金のしくみを理解せずに売ると、思わぬ負担が発生することもあります。不安なときは、税理士に相談して確認しましょう。

「取得費加算の特例」は相続から3年以内がカギ

相続した不動産を売るとき、「取得費加算の特例」を使えば税金を減らせる可能性があります。

【取得費加算の特例とは】

相続税を支払った場合に限り、その一部を不動産の経費として加える特例

たとえば、取得費800万円の土地に500万円の相続税を払った場合、経費は合計1,300万円と見なせます。その結果、売却益が少なくなり、譲渡所得税も抑えられる場合があります。

ウル蔵
経費が増えればその分所得を少なく申告できるからね!

ただし、この特例を使えるのは相続開始から3年以内に売却した場合に限られます。3年を過ぎると使えなくなるため、売却時期を逃さないように注意しましょう。

詳しい内容は税理士や国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」で確認できます。

「空き家の3000万円控除」を活用できるか確認しよう

相続した空き家を売る前に、「空き家の3000万円控除」が使えるか確認しましょう。

【空き家の3000万円控除とは】

一定の条件を満たすと売却益から最大3000万円を差し引ける制度

たとえば、被相続人が一人暮らしで住んでいた家を相続し、誰も住まずに取り壊したり耐震リフォームしたりしてから売却した場合が対象になります。

ただし、建築年や使われ方によって対象外になることもあります。使えれば数十万円以上の税金が減る可能性があるので、売る前に不動産会社や税理士へ相談して確認しましょう。

詳しくは、国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご覧ください。

スポンサーリンク

売却前に確認したい3つのポイント

相続不動産を売却する前に以下3つのポイントを確認しておきましょう。

  • 物件の価値と修繕の必要性を調べておく
  • 誰が名義人か、登記の確認を忘れずに
  • 地元の不動産会社と大手不動産会社との違い

物件の価値と修繕の必要性を調べておく

売却前に物件の価値と修繕の必要があるかを調べておくと、あとで困るトラブルを避けやすくなります。

築年数や場所、周辺で売れた家の価格を調べると、おおよその相場が見えてきます。たとえば築30年の木造住宅は、外見がきれいでも給排水管が古くなっていたりシロアリや雨漏りが見つかったりすることがあります。

ウル蔵
不具合があると買主に敬遠される可能性があるぞ

自分ではわかりにくいので、専門業者に点検をお願いすると安心です。もし直すべきところがあれば、事前に見積もりを取りましょう。その結果をもとに売り出し価格を調整したり、買い手への説明に使えます。

誰が名義人か、登記の確認を忘れずに

売却前には、必ず不動産の名義を確認しましょう。たとえ相続した家でも、登記簿に自分の名前が載っていなければ売れません。

ウル蔵
売却するには不動産の名義人になる必要があるんだ

相続登記がまだ済んでいないと、買主と契約を結ぶ手続きが進まず、トラブルの原因になります。また、兄弟などと共有名義になっている場合は、自分ひとりで売却を決められません。

法務局で登記簿謄本を取れば、誰が名義人か確認できます。費用は数百円でオンラインでも請求できます。

名義変更については、法務局「不動産登記申請手続」をご覧ください。

地元の不動産会社と大手不動産会社との違い

相続した不動産を売る前に、不動産会社の選び方はとても大切です。

地元の会社は周辺相場や土地の特徴をよく知っており、地域に合った販売方法を提案してくれます。たとえば、周辺の過去の売却事例や買い手の傾向を踏まえて動いてくれるため、売却活動がスムーズに進みやすくなります。

一方で、大手の会社は広いネットワークや広告力があり、都市部に住む買い手にもアプローチしやすい点が魅力です。

どちらにもメリットがあるので、ご自身の希望や物件に合った会社を選びましょう。複数社に査定を依頼し、対応や提案を比べることも重要です。

ウル蔵
大手・地元の会社の両方に相談するのがおすすめ!

相続不動産の売却は「5年ルール」にも注意

相続不動産の売却は「5年ルール」にも注意しましょう。

売却時の税金は、亡くなった方がその家を所有していた期間で変わります。

亡くなった人の所有期間税率
5年以下所得税:30%
住民税:9%
復興特別所得税:​所得税額の2.1%
合計:39.63%
5年超え所得税:15%
住民税:5%
復興特別所得税:​所得税額の2.1%
合計:20.315%

5年以下だと短期譲渡所得となり、税率は約39%と高くなります。

一方で、5年を超えていれば長期譲渡所得となり、約20%に下がります。たとえば、同じ利益でも売却タイミングによって税額が数十万円変わることもあります。

相続してすぐに売ると損をする恐れがあるため、まずは所有期間を確認しましょう。焦らず準備を進めることで、税負担を減らせる可能性があります。

ウル蔵
5年を超える年数経過してから売却すると節約できるぞ

急いで売らずにできる2つの対策

相続不動産を焦って売却する前に以下2つの対策を理解しましょう。

  • まずは「不動産の価値査定」をして相場を知る
  • 賃貸運用や空き家対策補助金も選択肢に入れる

まずは「不動産の価値査定」をして相場を知る

相続した不動産をすぐに売る前に、まず「今いくらで売れそうか」を確かめてみましょう。

価格の目安を知れば、急いで決める必要がなくなり、リフォームするかどうかも冷静に判断できます。

不動産会社に依頼すれば、近くで実際に売れた物件や現在の売出状況を参考に、価格の目安を教えてもらえます。会社ごとに評価の仕方が違うため、複数の会社に査定を頼むのがおすすめです。

ウル蔵
3~4社へ査定依頼してみよう!

例えば、築年数や立地が同じでも、提示される金額に違いが出ることがあります。まずは不動産の価値を把握し、売るかどうかをじっくり考えてみましょう。

賃貸運用や空き家対策補助金も選択肢に入れる

相続した家は、すぐに売らず選択肢を広げることが大切です。

たとえば、賃貸に出せば家賃収入が得られます。月5万円で貸せば年間60万円になりますが、築年数や立地により金額は異なるため、事前に賃貸サイトで相場を調べてみましょう。

また、空き家を対象とした補助金制度を活用できる場合もあります。耐震やリフォーム費用の一部を支援してくれる自治体もあるので、一度役所に相談してみましょう。

売却以外にも活用の方法はあります。焦らず、自分に合った運用を考えてみてください。

スポンサーリンク

相続した不動産を後悔なく売るための3ステップ

相続不動産を売る際は以下のステップで進めましょう。

  1. 専門家に相談して税金や制度を整理する
  2. 家族で方針を話し合い、トラブルを防ぐ
  3. 売却か活用かを比較してベストな時期を見極める

STEP①:専門家に相談して税金や制度を整理する

まず税理士や不動産会社に相談しましょう。譲渡所得税がどれくらいかかるか、特例が使えるかを確認しておくと安心です。

たとえば「相続空き家の3,000万円控除」などの制度が使えれば、大きな節税になります。ただし、制度には条件や期限があるため、知らずに手続きすると税金が多くかかるおそれがあります。

売却前にしっかり整理しておけばスムーズに進められ、後悔のない売却につながります。

ウル蔵
疑問や不安を解消しておこう!

STEP②:家族で方針を話し合い、トラブルを防ぐ

次に、相続不動産の売却について家族としっかり話し合い、方針を共有しましょう。

売りたい人と保有したい人の意見が分かれていると、後々トラブルになることもあります。相続人が複数いる場合は、誰が代表して手続きを進めるか売却後のお金の分け方を事前に確認しておくと安心です。

早めに意見を出し合えば、誤解やすれ違いを防げます。不動産の売却では、こうした話し合い不足からトラブルになるケースが多く見られます。冷静に話し合い、全員が納得したうえで進めましょう。

STEP③:売却か活用かを比較してベストな時期を見極める

最後に、売るか活用するかを比べて、最適なタイミングを見極めましょう。

築年数や空き家の期間が長くなると、売却価格が下がる可能性があります。一方、立地が良く需要があれば、賃貸として貸し出す選択も現実的です。

ただし、家賃収入だけでなく、管理の手間や修繕費なども考える必要があります。売却による利益と、貸した場合の収益を比べながら検討しましょう。

冷静に判断するためには、不動産会社や専門家に相談するのもおすすめです。

相続不動産の売却に関するよくある質問

相続不動産の売却に関するよくある質問をご紹介します。

相続不動産の売却でお困りの方は参考にしてみましょう。

  • 相続登記はすぐにやる必要がありますか?
  • 空き家を放置するとどうなりますか?
  • 兄弟との共有名義でも勝手に売れますか?

Q:相続登記はすぐにやる必要がありますか?

A:相続登記を早めに済ませておくことが大切です。

名義変更が終わっていないと、売買契約を結んでも所有権の移転ができず、実際の売却手続きが進みません。

ウル蔵
所有権が移転できないと買主が住めないんだ

登記には書類の準備や親族間の話し合いが必要で、時間がかかる場合があります。特に遺産分割協議が長引くと、売却のタイミングが遅れてしまいます。

さらに、2024年4月からは相続登記が義務となり、3年以内に手続きをしないと10万円以下の過料が科される可能性も出てきました。

令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

引用:東京法務局「相続登記が義務化されました」

トラブルを防ぐためにも、まずは司法書士に相談して、早めに準備を始めましょう。

Q:空き家を放置するとどうなりますか?

A:空き家を長く放置すると、思わぬ費用やリスクが増えていきます。

たとえば、毎年固定資産税がかかり続けますし、管理状態が悪いと自治体から「特定空家」に指定される可能性もあります。

特定空き家に指定されると、住宅用地の特例が外れ、税金が最大で約6倍になることもあります。また、建物が古くなれば修繕費も増え、防犯や火災のリスクも高まります。

ウル蔵
「放置されて問題になっている空き家」として国に指定されてしまうぞ

外観の悪化により、近所から苦情が出るケースも少なくありません。売らずに放っておくと、買い手が見つかりにくくなり、手放すタイミングを逃すこともあります。相続した空き家は、早めに売却を検討しましょう。

Q:兄弟との共有名義でも勝手に売れますか?

A:他の共有者の同意がなければ基本的に売却できません。

たとえば3人で相続した場合、1人だけで買主を見つけても、全員の合意がなければ売却手続きは進みません。

共有者の同意なく自分の持分を売ることは可能ですが、現実的には買い手が見つかりにくく、トラブルのもとです。また、売却益の分け方でももめやすいため、事前に話し合っておくことが大切です。

相続直後であれば、専門家に相談して遺産分割協議書を作成し、合意内容を明確にしてから売却を進めましょう。焦らず慎重に対応することが、円満な売却への第一歩です。

スポンサーリンク

まとめ:相続した不動産を売る際はリスクや税金面を理解しておこう!

相続不動産を焦って売却してはいけない理由や早く売るリスクなどを解説しました。

相続不動産を売る際は、控除特例を活用できるケースがあり、活用できれば売却時の税金を大きく節約できます。

しかし、特例を利用するにはいくつかの条件を満たす必要があったり、必要書類を揃えたりしなければなりません。

焦って売却しようとすると、これらの準備が整わず、不要な税金を支払うことになる可能性もあります。

不動産を相続した際は、焦って売却を決断せず、今の状況や控除特例の内容を理解したうえで行動しましょう。

「相続」に関する記事一覧はこちら!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次